2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K04959
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岡林 則夫 金沢大学, 数物科学系, 助教 (90387853)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 走査型トンネル顕微鏡 / 非弾性電子トンネル分光 / 表面 / 分子 / 振動分光 / トンネル過程 / 実験と理論の比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツRegensburg大のGiessibl教授と共同研究を行い、金属探針先端がCu(111)表面上の一酸化炭素(CO)分子に及ぼす力とその振動エネルギーの関係を、走査型トンネル顕微鏡と原子間力顕微鏡を組み合わせ調べ、大きな力を及ぼす探針は分子の振動エネルギーに大きな変化を及ぼすことを見出した。更に、力と振動エネルギーの変化の関係を古典的な振り子モデル用いて解析し、探針からの力により分子内や分子と表面との間の結合が弱くなるという効果を考慮にいれることで実験結果が精度よく再現できることを示した。以上の内容を論文としてまとめ、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)において発表した。研究成果はプレスリリースを行い広く周知し、北國新聞に取り上げられた。 上記の力と振動エネルギーの測定においては、探針と分子の距離をとても短くすると力センサーの挙動が不安定になるという問題が生じていた。この問題を克服するために、実験方法の改良を行い、成功した。 力と振動分光に関する研究を加速するために、Giessibl研の走査型トンネル顕微鏡/原子間力顕微鏡を雛形に顕微鏡のヘッドを作製し、組み立て、粗動機構の動作確認を行った。 スウェーデンLinnaeus大のMagnus Paulsson准教授と共同で行っている、Cu(111)表面上のCO分子に対する、金属探針ならびにCO修飾探針に対するトンネル電流像の実験と理論の比較に関する研究を論文としてまとめ、Physical Review Bにおいて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題名は”力場中の単一分子の振動分光”であり、プローブ顕微鏡の探針のつくる力場中の単一分子の振動分光を行い、その機構を解明する事が目的である。これまでの研究において、分子に及ぼされる力とその振動エネルギーの関係を実験により調べ、更にモデルにより実験結果を精密に解釈し、研究課題名に対応する”Vibrations of a molecule in an external force field”というタイトルの論文を、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaにおいて発表したので。
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Strategy for Future Research Activity |
Cu(111)に比べて、CO分子が弱く吸着するCu(110)表面に対する実験を推進し、これまでに得られた知見の一般性を確かめる。また、昨年度の実験の改良によって可能となった、探針と分子の距離がとても短い領域に研究を発展させる。また、作製した顕微鏡を実際に室温大気中で動かし、標準試料を用い動作確認を行う。
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Causes of Carryover |
分子が吸着する表面を銅の単結晶(Cu(111)やCu(110))からプラチナ単結晶に発展させることを考えていたが、Cu(111)やCu(110)で調べるべき事柄が多く残っていることが判明したので、プラチナ単結晶の購入を見合わせた。プラチナ単結晶の購入に想定していた予算は、プローブ顕微鏡の開発に必要な消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(13 results)