2017 Fiscal Year Research-status Report
ボンドエンジニアリングによる量子ドット形成機構解明
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16K04962
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
伊藤 智徳 三重大学, 工学研究科, 教授 (80314136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 亨 三重大学, 工学研究科, 准教授 (40362363)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 半導体量子ドット形成 / ヘテロエピタキシャル成長 / ぬれ層表面構造 / ひずみ緩和 / 格子不整合転位 / 成長様式 / 計算科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,GaAs基板上に形成されたInAs薄膜におけるひずみ緩和と量子ドット形成,ぬれ層表面再構成構造の安定性を中心に検討を進めた。具体的には,第一原理計算を用いて転位形成エネルギー,表面エネルギー,マクロ理論を用いて成長様式エネルギーを評価をすることで,(1)ひずみ緩和層導入の有無による(110)薄膜での成長様式の変化,さらに第一原理計算による表面エネルギー評価から(2)格子不整合ひずみによる(001)表面再構成新奇構造の出現可能性について議論を行った。 (1)InAs/GaAs(110)系においては,2次元成長が一般的であるが,ひずみ緩和層をInAs/GaAs界面に挿入することで,3次元島成長ひいては量子ドット形成に至ることがわかった。これは,ひずみ緩和による表面エネルギーの減少に起因しており,実験事実に対して初めて物理的解釈を与えたものである。 (2)前年度の検討からInAs/GaAs(001)系においては,(4x3)ぬれ層表面にInAsが0.96分子層成長した段階でIn吸着が停止すること,これは実験事実と矛盾することを明らかにしてきた。この矛盾に対して,表面再構成構造の安定性を詳細に検討した結果,(4x3)から(2x4)に移行する過程で中間状態としてc(4x4が出現することを新たに見いだした。具体的にはInAsの供給に伴い,0.71分子層において安定な1つのIn-Asダイマーと2つのAsダイマーから構成される(4x3)が,0.83分子層において2つのIn-Asダイマーと1つのAsダイマーから構成されるc(4x4)に変化することを明らかにした。この中間状態の出現は格子不整合ひずみに起因している。 以上の結果を前年度検討した(111)系の結果と考え合わせると,面方位によるひずみ緩和機構の違いが量子ドット形成の可否と密接に関連していると考えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一般にマクロ成長理論においては,量子ドット(3次元島)形成は,格子不整合ひずみのみに起因すると考えられてきたが,これまでの検討から,原子レベルでのひずみ緩和,ぬれ層表面再構成構造の2つの因子を考える必要があることを明らかにすることができた。すなわち理想表面をもつ(110)においては界面における格子不整合転位形成が,理想表面に近い(111)Aでは表面における積層欠陥四面体形成が,それぞれ2次元成長に重要な役割を果たしている。一方で(001)においては,成長過程で理想表面と大きく異なる多様な再構成構造が出現することが,量子ドット形成と密接に関連する可能性を見いだした。特に1分子層形成以前での成長初期過程での表面構造変化は,0.76分子層において(4x3)と1.33分子層に相当する(2x4)ドメインが共存するという走査型トンネル顕微鏡による観察結果を説明しうる新知見であり,平成30年度検討予定の(001)ぬれ層表面における成長過程ひいては量子ドット形成過程を解明する上でのブレークスルーになる可能性を秘めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はInAs/GaAs(001)系に焦点を絞って,前半は走査型トンネル顕微鏡による0.76分子層での(4x3)と(2x4)ドメイン形成について検討を行う。具体的には0.76分子層での表面状態を,本研究において新たに見いだした0.83分子層におけるc(4x4)構造と0.71分子層での(4x3)構造の共存状態として考えることで,ドメイン境界でのIn吸着に注目して1.33分子層に相当する(2x4)ドメイン形成機構の解明を図る。本検討で得た知見に基づいて,本年度後半は各ドメインでのIn吸着の振る舞いを検討,マクロ理論による成長様式エネルギー計算を併用して,InAs/GaAs(001)系における量子ドット形成に至る過程を系統的に検討する。
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Research Products
(6 results)