2017 Fiscal Year Research-status Report
積層型メタルスリットアレイ構造の擬似誘電体的性質を利用したテラヘルツ光制御
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16K04982
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
徳田 安紀 岡山県立大学, 情報工学部, 教授 (80393502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 浩一郎 岡山県立大学, 情報工学部, 助教 (10551822)
高野 恵介 大阪大学, レーザー科学研究所, 助教 (70583102)
加藤 康作 大阪大学, レーザー科学研究所, 特任研究員 (40751087)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メタマテリアル / スリットアレイ / テラヘルツ / 透過スペクトル / 誘電体多層膜 / 光学共鳴モード |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に確立した放電加工によるメタルスリットアレイの作製方法により,スリット幅などの構造パラメータを系統的に変えた試料を準備し,それらの2段構造の測定のためにスリットアレイ間の間隙を自動で変化できる測定系を構築し,時間領域分光(Time-Domain Spectroscopy:TDS)法を用いてテラヘルツ周波数領域での様々な組み合わせの透過スペクトルの測定を行った.さらに,時間領域有限差分(Finite-Differential Time-Domain:FDTD)法を用いたシミュレーションにより,この系で発現する特異な物理現象の解明を行った. 実験主導の研究としては,まずスリット幅依存性の測定結果が,我々のシミュレーションにより驚くほど忠実に再現できることを示し,共鳴モードの特異な振舞いに対する詳細な検討を行った.具体的には,偶数次モードが示すブルーシフトの臨界周波数のスリット幅依存性を記述する式を理論的に導出し,それによりTDS実験およびFDTD計算結果が極めてよく説明できることを示した.さらに,実験において2枚のスリットアレイ板をずらして強く密着させることで光学パスを遮断しても,現実には迷路のような隙間がどうしても存在し,そこを表面プラズモンポラリトンがすり抜けることができるため,異常透過が生じることを観測し,シミュレーションを用いて証明した.また,昨年度,理論的に予測した共鳴モード間の破壊的干渉によるモード消失は,レッドシフトモードとブルーシフトモードの干渉だけでなく,レッドシフトモード同士の干渉でも生じることを実験的に示し,その消失メカニズムは結合モードの反交差現象に基づいていることを明らかにした. 一方,シミュレーション主導の研究では,共鳴モードの多重交差によりループ状の奇妙な特性が得られることを示した.さらに,3段構造に関する検討も行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・自動測定系の構築により,効率的に,再現性良く,かつ少ない試料数で詳細な実験データを取得することが可能になった(取得したデータ量が多く,一部の課題で解析が追い付かない状況にある) ・研究成果の一部は,フルペーパとしてまとめ,著名な応用物理学関係の雑誌に投稿し,採択された.
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Strategy for Future Research Activity |
メカニズムを解明すべき物理現象が次々に見つかり,その解明に多くの時間を割いているが,最終年度では,解明できた課題と未解明の課題を仕分けて,成果のまとめをしっかり行うとともに,次につながる課題を探る予定でる. 実験主導の研究としては,人工誘電体であるメタルスリットアレイで通常の誘電体を挟んだハイブリッド系の特性を調べる.また,上下のスリット間の相対的な横ずれが透過特性に与える影響を調べる. シミュレーション主導の研究としては,可変高屈折率材料としての特徴を利用して,モード閉じ込め効果やモード結合効果を調べる.また,この系特有のモード消失現象の完全な物理メカニズムの解明に挑戦するとともに,共鳴状態に関する電子系と光学系との類似点と相違点を解き明かしたい.
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Causes of Carryover |
昨年度末に投稿し採択された論文の掲載費の支払いがまだであるのと,昨年度に投稿する予定の論文執筆が遅れているため. 主に英文雑誌論文の投稿に関する英文校正費用や掲載費用に使用する予定.
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