2017 Fiscal Year Research-status Report
プラズマ計測用のバックトークレス高安定光励起型2波長遠赤外レーザーの開発
Project/Area Number |
16K04984
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
中山 和也 中部大学, 工学部, 准教授 (40434584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 毅志 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (80370138)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レーザー安定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,大型で高密度化するプラズマ装置における核融合プラズマ計測では,波長50 μm帯の遠赤外レーザーを用いる新しい計測システムが必要とされている。しかし,光と電波の谷間に位置するこの領域では,光源を含め,計測手法が確立していない。そこで,2波長同時発振型のレーザー光源,干渉・偏光計測法,各構成要素(光学素子,検出器)の開発を進めている。高精度かつ高信頼性のプラズマ計測を実現するには,レーザー発振の安定化が必須である。光励起型遠赤外レーザーでは,励起光の戻り(バックトーク)の除去が長年の課題となっている。本研究では,バックトークレスの9R(8)CO2レーザー励起の48-m,57-μm CH3ODレーザーの安定発振を実証し,その安定化技術を確立する。 本年度は,(1) 高出力励起に対する光アイソレーターの試験,(2)低熱膨張合金製ロッドによる遠赤外レーザー共振器の固定,(3)遠赤外レーザー用光学素子の開発を行った。ZnSe製の波長板は,従来のCdS製のものと比較し,位相差の精度が低いが,レーザー耐力が高い(CW 100 W以上)という利点がある。今回,ZnSe波長板と2枚のATFRミラーと組み合わせた光アイソレーターを用いて,120 WのCO2レーザー励起での遠赤外レーザー発振試験を行った。その結果,戻り光による出力変動が除去でき,48-,57-μm CH3ODレーザーともに円偏光で,2波長同時発振が可能であることを確認した。遠赤外レーザー共振器長の変化は,レーザー発振の安定性に大きく影響する。そこで,室温付近で熱膨張係数0.3×10-6/℃の低熱膨張合金ロッドを用いて遠赤外レーザー共振器を固定した。目的のプラズマ計測では,直線偏光したレーザー光をプラズマに入射する。そのために,両遠赤外レーザー用の反射防止付きのゼロオーダー波長板(結晶水晶製)を製作し,その特性を試験した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度においては,当初の計画通り,高出力の励起CO2レーザー(~120 W)に対する光アイソレーターの動作試験,低熱膨張合金ロッドによる遠赤外レーザー共振器の固定,遠赤外レーザー用光学素子の開発を実施した。 光励起型の遠赤外レーザーの出力は,励起光源の出力に比例する。よって,偏光子と波長板で構成する光アイソレーターには,少なくともCW 100 W以上の高出力レーザー光に対する耐久性が要求される。そこで,偏光依存性のある2枚のATFRミラーとプリズム型のZnSe波長板を用いて,その透過度,偏光度,位相差等を測定した。実際に光アイソレーターを配置し,戻り光が除去できること,48-,57-μm CH3ODレーザーが同時発振することを確認した。遠赤外レーザー共振器長の変化(例えば振動や室温変化による)は,遠赤外レーザーの出力や周波数の安定性に大きく影響する。本研究では,遠赤外レーザー共振器長を制御することで,長時間でのレーザー発振の安定化を行う計画であるが,本来は,制御することなく十分に安定であることが望ましい。そこで,熱膨張係数0.3×10-6/℃の低熱膨張合金ロッドを用いて共振器を固定した。本遠赤外レーザー装置は,ステッピングモーターにより共振器長を制御する。 現在までのところ,励起用CO2レーザーは外部シュタルクセルによる周波数安定化が可能で,光アイソレーターにより戻り光による出力変動が除去できること,目的の48-,57-μm CH3ODレーザーは,ともに円偏光で,問題なく2波長同時発振し,レーザー共振器長の制御により出力安定化できることを確認しており,次の研究計画につなげる結果を得ている。 以上のことから,本研究課題は,おおむね順調に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の遠赤外レーザーを用いたプラズマ計測では,光ヘテロダイン干渉法による計測が行われている。そのために,本研究の遠赤外レーザー装置は2本のレーザー管(A:プローブ,B: ローカル)を持つ双子型となっている。干渉計測においては,AとBの差周波(ビート信号)の安定性が重要となる。これまでは,一方のレーザー管のみを使用して各種実験を行ってきたが,平成30年度は,双子型として動作させ,本研究で開発する光アイソレーターを用いて,戻り光を軽減した状態で励起CO2レーザー装置と遠赤外レーザー装置の各共振器長を同時制御することで,2 波長遠赤外レーザー発振の出力及びビート周波数の長時間安定性を実証する計画である。また,目的のプラズマ計測では,直線偏光したレーザー光をプラズマに入射する。本研究で開発した光アイソレーターを使用すると,2波長遠赤外レーザーは円偏光で発振することが分かっている。そこで,マーチンパプレット型ダイプレックサーを用いて,偏波面の揃った2 波長遠赤外レーザーの直線偏光化を試みる。レーザーの安定性に加えて,高出力かつ高品質のビームであることも計測用光源としては必要なことである。レーザー出力鏡は,それを実現する上で重要な光学素子である。そこで,遠赤外レーザー光取出しのための結合孔のサイズの異なる出力鏡を試験する。 以上の研究により,光アイソレーターを用いたバックトークレスの高安定光励起型遠赤外レーザー装置を開発し,9R(8)CO2レーザー励起の48-57-μm CH3OD レーザーの安定発振を実証し,その安定化技術を確立する。
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Causes of Carryover |
理由 平成29年度の実験が効率よく進んだ結果,予定よりもレーザーガス(消耗品)の消費量が少なくなったため。 使用計画 実験を行うにあたり,レーザーガス(消耗品)は必須であることから,平成30年度の助成金と合わせて使用する。
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Research Products
(5 results)