2018 Fiscal Year Research-status Report
励起状態が隣接したナノ構造間を移動する機構のSTM発光による解明
Project/Area Number |
16K04988
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
櫻井 亮 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主幹研究員 (60280731)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分子スピン / ナノドット / スピン相関 / 表面化学反応 / ナノシート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1)本実験に必要な試料を新規に準備すること、2)ナノスケールの構造体を作成して構造体間のエネルギーや情報の移動過程を光検出走査型プローブ顕微鏡法を用いて解明すること、3)励起状態の移動によるスピン操作の可能性の探索することにある。 平成28年度からナノスケールの構造体の新規作成と特性評価を中心に実験を進めている。表面化学反応を利用して酸化グラフェンシート上に有機金属錯体分子のナノドットを作成する技術を開発し、ナノドットの基礎特性を調べている。ナノドットの大きさは2nm程度である。表面化学反応時間を変えると、ナノドットの形状はほぼ同じで、ドット間の平均間隔が変わることを見出した。酸化グラフェンシートと有機金属錯体分子との電荷移動によって分子に含まれる金属イオンのイオン価数が変わり、各々の分子がスピン1を持つ。つまり、ナノシート表面に約100-150個の分子スピンが規則正しく並んでドットを形成し、スピン間には弱い磁気相互作用が働くシステムである。ドット間の平均間隔が長い場合(平均間隔≧24 nm)、スピン相関がなく、磁化曲線にヒステリシスは現れず、常磁性を示す。一方、平均間隔が短くなると、動的磁化率の複素成分が次第に大きくなり、スピン相関を示す。磁化曲線にヒステリシスが現れ、保磁力は平均間隔の減少と共に大きくなる。隣接したナノドットとの間に距離に関係した強磁性的な相互作用が働いている。また、動的透磁率に駆動する磁場の周波数に対応したピークシフトが現れ、スピングラスに似た特性を示す。しかし、詳細を調べてみると従来のスピングラス、単分子磁石、強磁性微粒子、フラストレーション磁石とはメカニズムが異なることが判明した。このメカニズムを解明する実験を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
エネルギー転移を光検出走査型プローブ顕微鏡で調べる目的で作り出したナノシート上の有機金属錯体分子のナノドットが独立したスピンを持ち、ドット間の距離に関連したスピン相関が生まれるという非常に興味深い物理現象が見つかり、その原因解明に時間を要しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
弱く相互作用する分子スピン系で起こるさまざまな物理現象のメカニズムを解明する。その後、当初の目的である光検出走査プローブ顕微鏡を用いたエネルギー遷移過程の解明も実施する予定である。
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Causes of Carryover |
研究の進捗が遅れている。表面化学反応を用いて作成した試料のスピンダイナミクスに非常に面白い実験結果が得られている。1年間の延長期間中に研究をさらに進展させ、メカニズムを解明する。それに伴う追加実験の消耗品、論文作成&掲載費、学会発表の登録料や旅費などに使用する予定である。
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Research Products
(4 results)