2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K04992
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
眞銅 雅子 大阪工業大学, 工学部, 講師 (10345481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
首藤 健一 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40300876)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 仕事関数 / 電荷交換 / 光電分光 / 負イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、低い仕事関数を持つ触媒電極表面に正イオンを入射し、電荷交換を経て脱離・散乱する負イオンのエネルギー分布の精密測定を行うとともに、表面反応の詳細を議論することを通じて、負イオン生成の高効率化を行うことを目的としている。前年度までに正イオン入射系、散乱粒子数の測定系、光電分光による触媒電極の仕事関数測定系を備えた装置を立ち上げた。さらに、銀薄膜表面に水分子を吸着させることで仕事関数を連続的に変化させ、仕事関数と負イオン生成量に相関がある様子を示すことに成功した。以上の成果を平成29年10月につくば市で開催された国際会議The 8th International Symposium on Surface Scienceにおいて発表した。 平成29年度は、高速応答プリアンプの改良を行って信号ノイズを低減させる工夫を施し、詳細なデータを取得した。水分子が1層程度吸着すると、仕事関数が減少するにも関わらず、負イオン生成量も減少した。一方、多層吸着を行うと負イオン生成量が増加した。この現象を解明する為に、銀表面に水分子が吸着した系について第一原理計算を行った。初期吸着では水分子は酸素原子を銀表面側にして物理吸着するので[K. Bange et al., Surf. Sci.183 (1987) 334]、真空側を向いている水分子の双極子モーメントが、ヘリウムの中性状態とイオン化状態とが共鳴するエネルギー交差を阻害する。一方、多層吸着では水分子層内部で基板とHeの共鳴負イオン状態が変化すると推測され、そのために負イオン生成量が増加すると考えられる。以上の結果を学術雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画段階で計画していた以下の3項目について述べる。 (1)触媒の仕事関数の直接測定について:キセノンランプを用いた光電分光系を構築し、既に仕事関数の測定に成功している。現在のところ、触媒電極として水を吸着させた銀表面を使用しており、吸着量を変化させることによって仕事関数を連続的に変化させることも可能になった。 (2)差動排気型測定室の設置および励起種引出: 差動排気を行うための真空排気系の購入が出来なかったため設置を見送ったが、第一原理計算の結果と実験結果を比較検討し、触媒電極表面において水分子による共鳴効果で負イオンの生成率が増加することを示した。また、電荷交換による負イオン生成に関わる電子状態を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに銀薄膜表面に水分子を吸着させることで仕事関数を連続的に変化させ、負イオン生成量との相関を示すことができた。併せて、第一原理計算を用いてその物理的背景についても検討することができた。研究最終年度は、散乱粒子のエネルギー分布を分解能の高い高精度な静電フィルターを用いて測定することで、計算結果の裏づけをとることを計画している。また、触媒電極として数種類の有機薄膜を用い、表面の電子状態の測定を行いつつ第一原理計算を用いて検証する。現在は有機薄膜の基板材として用いる金薄膜の仕事関数の測定を予備実験として終了したところである。未だ不明な点が多かった低仕事関数を持つ触媒電極表面における負イオン生成の物理を明らかにする狙いがある。
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Causes of Carryover |
投稿論文の英文校閲料と投稿料に、予定額と差額が出たため残額が生じた。また、試料や真空部品・電子部品の消耗が予定よりも少なかったため、消耗品費に残額が生じている。 翌年度分として、有機薄膜生成用の試薬や、投稿論文の再校閲料または新規論文投稿料に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)