2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K04994
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Research Institution | Sasebo National College of Technology |
Principal Investigator |
篠原 正典 佐世保工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (80346931)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プラズマ / 酸化 / 赤外分光 / 多重内部反射 / エーテル / テトラエトキシシラン |
Outline of Annual Research Achievements |
生体分子やアモルファスカーボン膜など炭素で構成される膜の酸化は,膜中に C-OHが形成されるとともに,C=Oが形成される。そこで,どちらが形成されやすいのか,明らかにするためにも,酸素を含みOH基を持っていないC-O-Cの構造をもつエーテルに注目した。ジイソプロピルエーテル((C3H7)2O)を原料分子として,プラズマ化学気相堆積法により,膜堆積を行い,その反応過程を調べ,その中でも酸化の進行について調べた。調べた方法は,これまで開発を進めてきた多重内部反射赤外吸収分光法(MIR-IRAS)であり,長崎大学より佐世保高専に移設し,稼働させることができた。膜表面では分子中のC-O基は切断され,膜中でC=O基が形成されていることが分かった。もちろん,有機分子なので,単結合の炭素原子に水素と結合したCXHY基が形成される。ただし,膜中に炭化水素(CXHY)が形成された後,膜中のC=Oが形成されていくことが分かった。すなわち,CXHY基を酸化させてC=O基が形成されていると考えられる。この膜中にはOH基が形成されていないと考えられ,OH基が形成されるよりもC=Oの方が形成されやすいということも明らかになってきた。 次に,C-C結合,炭化水素分子をOHで有効に分解できるのなら,過酸化水素水中でプラズマを生成しOHを生成すれば効率的に分解できるはずである。そこで,テトラエトキシシランと過酸化水素水の混合溶液中でプラズマ生成し,発生したOHによりテトラエトキシシランの分解を試みたが,分解は非常に難しかった。ここから,酸素原子,OHとの反応以上に,電子衝突や紫外線なども分解に寄与していことを示していると考えられる。 さらに,モリブデンのプラズマ酸化によるモリブデン三酸化物の合成の実験を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属機関の変更もあり,真空装置,多重内部反射型赤外分光装置の移設,それらの立ち上げにより時間がとられ,研究の進展が危ぶまれたが,装置も順調に立ち上がり,ひとまずは安心できた。そればかりか,新たな結果も出てきた。 OHによる酸化は強いことは知られているが,テトラエトキシシランはOHだけでは効率的な酸化はできないことが分かってきた。プラズマ酸化には, OやOHなどの酸化源とともに,紫外光や電子の衝突が重要であることがわかってきた。また,炭化水素の酸化によりOHが生成されることが知られていたが,C=Oの形成が優先される可能性も見出した。さらに,プラズマ酸化によるモリブデンからモリブデン三酸化物の合成の実験を始めた。プラズマ酸化という現象を幅広くとらえ,研究計画以上に,研究を広く展開することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
プラズマ酸化では酸素ラジカルやOHラジカルなど酸化源さえ制御すれば,効率的な酸化ができると考えてきたが,この研究で,それだけではなく,電子・紫外光などとの相乗効果で酸化が進行するということが示された。本結果を確固としたものとし,研究発表,論文作成を行っていく。 エーテルを用いたプラズマ堆積における炭化水素の酸化現象についての結果をまとめ,論文執筆していく。 また,Moなど金属のプラズマ酸化についても研究を進めていく。 有機分子,生体分子など様々な炭化水素の分子のプラズマ酸化の実験を進めていき,これまでの研究と合わせて,プラズマ酸化とは何か,どうすれば効率化できるかについて明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
工夫を重ねて既存の装置を改良し,研究に用いて酸化現象を調べる実験を行ったため,真空部品の購入が抑えられたことが大きい。さらに,プラズマ酸化現象を発光分光でも調べたかったが,その研究よりもこれまでの赤外分光装置を用いた結果に面白い結果が現れたため,赤外分光の研究に注力したことによる。
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Research Products
(6 results)