2016 Fiscal Year Research-status Report
裏面照射粉体PLD法による3次元構造を持つ多層多元素薄膜の作製
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16K04999
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Research Institution | Sasebo National College of Technology |
Principal Investigator |
川崎 仁晴 佐世保工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (10253494)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 粉体ターゲット / パルスレーザデポジション / プラズマプロセス / 薄膜 / 裏面照射 |
Outline of Annual Research Achievements |
粉体をターゲットとするプラズマプロセス、特にパルスレーザデポジション法で薄膜を作製する新しい手法を考案し、薄膜作製を試みた。平成28年度は粉体ターゲットを用いて、紫外、可視、赤外のパルスレーザによるPLD薄膜作製が出来るように、現有の装置を改造した。特に、①高速度カメラ(Phantom:V1211)によるプラズマプルームの発生・成長の観測、②高速度分光分析装置(浜松ホトニクス:PMA-50)による原子分子計測③静電プローブ(ARIOS)による電子密度の計測、④マスアナライザ(アルバック:四重極型質量分析計:現有)による微粒子の計測、ができる様に改造したレーザはNd:YAGで波長は第2高調波、レーザフルエンスは5J/cm2以下になる様に調整した。また、基底真空は5×10-3Pa以下、ガスはアルゴン(Ar)と酸素(02)の混合ガスを使用した。その結果以下の事が判った。 ①Snをドープしたフォトルミネッセンス特性を持つSiO2薄膜の作製に成功した。元素組成比はターゲット粉体中の組成比に非常に依存し、制御可能である事が判った。 ②磁性薄膜であるBi3Fe5O12薄膜の作製に成功した。BiとFeの融点・沸点が大きく異なるため制御は難しいが、工夫により、同じ組成である磁性薄膜は作製できる事が判った。 ③プラズマの発光や電子密度などは、ターゲット微粒子のサイズに強く依存する事がわかった。 ④裏面からレーザを照射する薄膜作製法によって実際に薄膜の作製を行い、AlやBiの薄膜作製に成功した。但し成膜速度は通常の方法より遅い事が判った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、「PLD装置で用いるターゲットとして、粉体を用いたPLD法によって薄膜を作製するとともに、粉体サイズとレーザ波長との相関を明らかにすること」である。特にレーザを裏面から照射する新しいPLD法に関して詳細に調査し、制御された方法で機能性薄膜を作製する点が特徴である。予定通り本年度は、薄膜作製装置を完成させ、裏面からレーザを照射する方法で、酸化チタン(TiO2)、窒化ボロン(BNx)、酸化タングステン(WO3)、SnドープSiO2、Bi3Fe5O12薄膜の作製を行い、成功した。薄膜はSEMやXPS、XRD、EDX等で分析し、組成制御や結晶性制御などがある程度行える事を明らかにした。従って、当初の目的は達成されていると考えている。しかしながら、申請者が目的としているレーザ波長と微粒子サイズの相関関係や、それを元にした成膜機構の解明、薄膜の膜質制御は行えていない。これは、装置作製に時間を要し成膜の回数が少ないためである。従って「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に装置がおおよそ完成したので、レーザ波長や粉体のサイズを変えて薄膜を作製する。このときプロセスプラズマを、現有の高速度カメラ(PhantomV1211)、高速度分光分析装置(浜松ホトニクスPMA-50)、静電プローブ(ARIOS)、マスアナライザ(アルバック)等を用いて分析するとともに、作製した薄膜の特性をXRD、XPS、SEM、AFM等で調べる。それらの相関関係から成膜機構を解明する。 また、ターゲットホルダとして透明の石英ガラスを用い、レーザを裏面から照射する新しいPLD法を用いて多くの機能性薄膜を作製し、この方法による特徴を調査する。特に、個の方法の弱点である、成膜速度も通常の方法に比べて非常に遅い点は、粉体の種類や条件(粉体サイズや光学的特性)、ガス圧、レーザの波長や強度などを工夫し克服する。特に、平成29年度は、作製対象をよりアブレーションが起こりやすい材料(AlやBi等)に絞り、その時のプラズマプルームの計測をより詳細に行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
真空容器の改造が予想より行いやすく、研究代表者等の保有する技術と消耗品だけで行えたために使用額に余裕が生じた。その分を粉体ターゲットの購入に充てたが、それでも余りが生じたため翌年度に使用する事とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
真空容器の改造をさらに細かく行うために使用する。また、新しく高価なターゲットの購入(金やPtなど貴金属=センサー感度の向上につながる)の分の購入に充てることで、より幅白い薄膜作製を行う。
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Research Products
(22 results)