2017 Fiscal Year Research-status Report
裏面照射粉体PLD法による3次元構造を持つ多層多元素薄膜の作製
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16K04999
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Research Institution | Sasebo National College of Technology |
Principal Investigator |
川崎 仁晴 佐世保工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (10253494)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 粉体ターゲット / パルスレーザデポジション / プラズマプロセス / 薄膜 / 裏面照射 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、多元素をターゲットとする薄膜の需要が増加している。例えば燃料電池は、地球温暖化物質を排出する事無く、かつ天候などの条件に左右されない安定した発電が可能であるため注目を集めているが、電極や電解質が多元素であるために多ターゲットプロセスが必要であるなどのコスト面に問題があった。これを克服するために、粉体をターゲットとするプラズマプロセス、特にパルスレーザデポジション法で薄膜を作製する新しい手法を考案し、薄膜作製を試みた。平成29年度は、前年度に作製した「粉体ターゲットを用いたPLD薄膜作製装置」を用いて、薄膜作製を行った。特に紫外、可視、赤外のパルスレーザによる薄膜作製と性質の比較を行った。レーザはNd:YAGで波長は355nm(第3高調波)、532nm(第2高調波)、1064nm(基本波)、レーザフルエンスは3J/cm2以下になる様に調整した。また、基底真空は5×10-3Pa以下、ガスはアルゴン(Ar)と酸素(02)の混合ガスを使用した。結果から、次のことが判った。1)どの波長でも薄膜作製を行うことができたが、成膜速度は基本波、第2高調波、第3高調波の順に低くなることが判った。2)結晶性も波長によって違いが見られたが、粉体の性質との定量的な相関は得られなかった。3)粉体の特性(融点や電気伝導性、直径や形状)によっても作製される薄膜の性質に差が見られた。4)粉体を混合させた場合、粉体が酸化物であり、そのサイズが同程度であれば、作製される薄膜の組成が制御できる事が判った。5) 粉体を混合させた場合、粉体酸化物と金属等その性質が異なる場合は、作製される薄膜の組成制御が困難な場合がある事が判った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、「PLD装置で用いるターゲットとして、粉体を用いたPLD法によって薄膜を作製するとともに、粉体サイズとレーザ波長との相関を明らかにすること」である。特にレーザを裏面から照射する新しいPLD法に関して詳細に調査し、制御された方法で機能性薄膜を作製する点が特徴である。平成29年度は、薄膜作製装置を完成させ、裏面からレーザを照射する方法で、波長依存性を中心に実験を行った。波長は355nm(第3高調波)、532nm(第2高調波)、1064nm(基本波)、レーザフルエンスは3J/cm2以下になる様に調整した。結果から、どの波長でも薄膜作製を行うことができること、粉体を混合させた場合、粉体が酸化物であり、そのサイズが同程度であれば、作製される薄膜の組成が制御できる事が判った。しかしながら、成膜速度が基本波、第2高調波、第3高調波の順に低くなることや、結晶性等の膜質がレーザ波長や粉体の特性(融点や電気伝導性、直径や形状)によって差があること等が判り、膜質制御には工夫が必要である事が判っている。さらに、年度後半の12月からレーザが故障し、成膜ができなくなったため、詳細な実験が行えていない。従って「おおむね順調に進展している」とさせていただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、レーザの修理を行った後、平成29年度に引き続き、レーザ波長や粉体のサイズを変えて薄膜を作製する。このときプロセスプラズマを、現有の高速度カメラ(PhantomV1211)、高速度分光分析装置(浜松ホトニクスPMA-50)、静電プローブ(ARIOS)、マスアナライザ(アルバック)等を用いて分析するとともに、作製した薄膜の特性をXRD、XPS、SEM、AFM等で調べる。それらの相関関係から成膜機構を解明する。特に、波長に対する依存性は定量的にまとめ、波長によって作製する粉体の特性が制御できるように検討する。さらに可能であれば粉体の特性(融点や電気伝導性、直径や形状)と、膜質との相関、特に混合したターゲットを利用したときの膜の組成制御に関しても詳細に調べ、本方法による高品質薄膜作製に関して作製方法を確立する。加えて、2次元~3次元薄膜の作製を行うために、粉体の種類を位置および高さ方向で変化させて薄膜作製を行い、薄膜の2~3次元かが可能かどうかを調べる
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Causes of Carryover |
予定していた物品の一部が、別経費あるいは他学科の退官者から納入できたため。
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Research Products
(15 results)