2016 Fiscal Year Research-status Report
結晶中に励起される非線形エネルギー局在の格子スケール制御法の構築
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16K05041
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
土井 祐介 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (10403172)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 非線形格子力学 / 分子動力学 / 非線形局在モード / 離散ブリーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
結晶構造をモデル化した数理モデルにおける非線形局在モード(Intrinsic Localized Mode,ILM)の移動性について時間発展シミュレーションにより解析を行なった。Fermi-Pasta-Ulam格子の拡張として得られた、ILMが高い移動性を示す対称格子の構築法を高次の非線形相互作用をもつ格子モデルおよび2次元非線形格子モデルに適用し、それらのモデルでのILMの構造、ダイナミクスを検証した。これらのモデルではILMの移動性を抑える非線形項を完全にゼロにすることは困難であることが明らかになったため、この非線形項を最小化する相互作用パラメータの組み合わせを計算した。これにより高次の非線形相互作用を持つ1次元格子モデルに対して良好なILMの移動性を実現する系の拡張が可能となったが、正方格子型2次元格子モデルにおいては実効的オンサイトポテンシャルの影響により移動性が大きく向上することは無いことが確かめられた。 また、現実的な原子間相互作用ポテンシャルを用いてbcc結晶構造における移動型ILMの励起の分子動力学シミュレーションを行った。具体的にはFeおよびVの結晶について計算を行い、Vについては初期条件に対してロバストに移動型ILMが生成されるのに対して、Feについては同様の条件では移動型ILMがほとんど生成しないことが確かめられた。Vについてはキンク解からエネルギーが放出される形でのILMの励起も確かめられた。以上のように同じbcc構造であっても相互作用ポテシャンルが異なることにより、移動型ILMの励起特性に大きな差異が現れることが明らかになった。 さらに、3次元ナノ構造であるカーボンナノチューブでの移動型ILMの生成について明らかにするため、静止型ILMの安定性について数値解析を行ない、移動型ILMに遷移させるための条件を検討するためのデータを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画で予定していた解析をほぼ実施できた。1次元FPU格子で得られているILMの良い移動性を実現する対称格子の構築法をより一般的な状況に拡張する試みについては、当初予想と異なるアプローチで近似的に実現できることを示した。また高次元モデルでのILMの移動性を支配する要因を整理することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)2次元非線形格子モデルにおける対称格子とILMの移動性 結晶構造内でのILMの移動性の議論のために,高次元格子モデルにおける対称格子の構築を目指す。ILMはある原子列に沿って移動するが、その周辺の原子からの作用はオンサイトポテンシャルとしてモデル化される。非線形オンサイトポテンシャルによる移動型ILMへの実効的ポテンシャルを極小化する方法を検討する。 (2)境界からの力学的作用と ILM の相互作用 数理モデルおよび原子モデルにおいて、格子構造の対称性とこれらの外部作用の異方性 (単軸入力、一様入力)、作用時間の変化によるILM のダイナミクスへの影響を網羅的に調べる。これにより系の境界部分からの力学作用による内部のILMの移動法を検討する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国際会議が国内開催となったため予定額を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の国際会議あるいは海外研究者との研究打ち合わせへの支出を計画している。
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Research Products
(11 results)