2016 Fiscal Year Research-status Report
マルチスケール材料モデリングによるBCC金属の離散転位塑性解析の実現
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16K05044
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
高橋 昭如 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 准教授 (00366444)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 混合転位 / 分子動力学法 / 転位芯 / 転位動力学法 / 易動度 / BCC |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,混合転位を含む原子モデルの作成方法の考案と混合転位芯の構造およびエネルギ解析に関する研究を実施した. 混合転位を含む原子モデル作成法については,周期的に配列された転位の原子モデルであるPeriodic Array of Dislocations (PAD)モデルを作成するために,転位線の方向と転位の移動方向に周期境界条件を与える必要がある.そのため,原子モデルの作成においては,その最小の単位である単位格子が周期性を持つことが必要である.そのような単位格子を作成するため,転位のすべり面上の原子配列の特性を分析し,任意の結晶方位の周期性を持つ単位格子の作成を可能とした.ここで構築した方法を計算コードに実装し,任意の方位を持つ原子モデルおよび混合転位の挿入までを自動化することに成功した.この計算コードを用いることで,以降の混合転位に関するパラメトリック研究を効率的に進めることが可能になった. 混合転位芯の構造およびエネルギ解析においては,様々な混合転位の転位芯構造を,共役勾配法を用いた原子位置の緩和計算を行うことで求めた.その結果,直線的な構造を持つ転位と,潜在的にキンクを有する転位芯構造があることがわかった.転位芯付近の原子のポテンシャルエネルギと,弾性論より求めた転位の自己エネルギの比較を行うことにより,各混合転位において,転位芯半径を求めることに成功した.また,パイエルス応力を求めた結果,直線的な転位芯構造を持つ転位のパイエルス応力が極端に大きな値となることがわかった.すなわち,直線的な転位芯構造を持つ転位は熱的な運動を行い,キンクを有する転位は非熱的な運動を行うことが予想される. さらに,混合転位の非熱的運動の分子動力学モデリングに関する研究も開始し,様々な混合転位に対する様々な温度での転位の易動度や摩擦応力のデータ取得を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在の進捗状況は,平成28年度に計画した研究内容である混合転位を含む原子モデルの作成方法の考案に成功し,また混合転位の転位芯の構造およびエネルギ解析を行うことができた.原子モデルの作成においては,原子モデル作成のためのコードを開発し,原子モデルの作成の自動化および効率化に成功した.転位芯の構造とエネルギ解析では,転位動力学解析で有用な転位芯半径の取得や転位の熱的および非熱的運動の分類に寄与するデータを取得することができた.さらに,平成29年度での実施を予定していた混合転位の非熱的運動の分子動力学モデリングにも着手し,転位の易動度や摩擦応力のデータの取得をすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,転位の非熱的および熱的運動について分子動力学法を用いた数値シュミュレーションとその結果の分析およびモデリング研究を進める. 転位の非熱的運動の分子動力学モデリングでは,平成28年度に取得したデータに加え,さらに様々な混合転位および温度条件での易動度や摩擦応力のデータを分子動力学法による数値シミュレーションを用いて取得する.さらに平成30年度での転位動力学法への易動度や摩擦応力の実装に向けて,易動度の定式化(モデリング)を行う. 転位の熱的運動の分子動力学モデリングでは,転位芯の構造分析において非熱的運動を行うことが予想された混合転位に対してNudged Elastic Band (NEB)法を用いたMinimum Energy Path (MEP)解析を用いて,熱的運動のメカニズムであるキンク対形成のエネルギの算出を行う.さらにせん断応力を負荷した場合のキンク対形成のエネルギの算出を行い,せん断応力に対する依存性を調べ,モデル化する.
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Causes of Carryover |
物品費として購入した設備(ワークステーション)の価格および国際会議出張のための旅費の額が,予算の計算時から変化したため,差額が生じ次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度では,分子動力学法を用いた転位運動のモデリングが予定されているため,平成28年度以上の計算量および計算データの取得が見込まれる.そこで,計算データ保管のための装置の購入のための使用を予定している.
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