2017 Fiscal Year Research-status Report
マルチスケール材料モデリングによるBCC金属の離散転位塑性解析の実現
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16K05044
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
高橋 昭如 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 准教授 (00366444)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 転位動力学 / マルチスケール / 分子動力学 / 混合転位 / 易動度 / キンク対 |
Outline of Annual Research Achievements |
BCC鉄中における混合転位の非熱的運動に対する易動度について,易動度の変化が著しい100Kから200Kの温度において,さらに詳細に分子動力学法を用いた計算を実施した.その結果,50Kから600Kの温度領域に渡る易動度のデータに対し,sin関数を用いた近似式のフィッティングを行い,温度と混合転位の種類(転位線とバーガースベクトルのなす角度)を変数とした易動度のモデルの作成に成功した.作成した易動度のモデルを転位動力学コードに実装し,各種混合転位による流動応力を計算した. 一方,混合転位の熱的運動であるキンク対機構について,活性化エネルギをNudged Elastic Band(NEB)法を持ちいて計算した結果,らせん転位においてキンク対の活性化エネルギが極めて大きく,その他のキンク対機構による移動する混合転位においては,比較的低い活性化エネルギであることがわかった.さらに,応力を負荷した場合のキンク対の活性化エネルギを計算した.応力に依存した活性化エネルギを用いて,各温度における摩擦応力の計算が可能であることがわかった. 平成30年度の実施に先駆けて,スピノーダル分解した鉄ークロム合金の強度解析を実施した.ここでは,混合転位の運動特性の方位依存性の検証のための基礎データとするため,全ての転位に対して同じ易動度(方位依存性を無視した易動度)を与えた計算を実施した.スピノーダル分解したクロム濃度の分布について,波長や振幅,結晶方位の依存性について検討を行なった.その結果,これまでの研究により明らかであった振幅や結晶方位に対する依存性を確認するとともに,波長に対する依存性があることが明らかになった.これは,波長が変化することによって,転位の張り出しの大きさが変化し,相互作用するクロム濃度に変化が生まれるためである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載した研究の年度計画に沿って研究を進行することができている.具体的には,混合転位の非熱的運動に対する易動度を温度と混合転位の種類の関数としてモデル化し,転位動力学に実装可能な形にまとめることができた.さらに,混合転位の熱的運動であるキンク対機構について,活性化エネルギを計算し,転位動力学に入力するための基礎パラメータの取得に成功した.さらに平成30年度予定している内容についても先行的に着手し,平成30年度に実施する研究内容について見通しを具体的に立てることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の段階において,混合転位の易動度のモデルの作成を完了し,転位動力学コードへの実装に着手することができている.今後,さらに様々なケースの計算を実施することによって,温度と混合転位の種類の関数とする易動度のモデルを使用した場合の計算の安定性について確認および検討することが必要である.また,スピノーダル分解した鉄ークロム合金について,温度と混合転位の種類の関数とする易動度のモデルを実装した転位動力学コードを用いて計算を行い,温度と混合転位の種類が与える強度への影響について研究を進める.
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Causes of Carryover |
当初予定していた金額からの差額が生じたため,次年度使用額が生じた.次年度においては,旅費で推測される差額に対して使用する予定である.
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