2017 Fiscal Year Research-status Report
捕食行動をもとにした流体力学的な計算から放散虫骨格の多様性を明らかにする試み
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16K05045
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
吉野 隆 東洋大学, 理工学部, 教授 (60269496)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ストークス抵抗 / 放散虫 / 捕食 / 軸対称 |
Outline of Annual Research Achievements |
捕食行動様式がほぼ解明されていてなおかつ形状が単純な放散虫について,流体力学的な計算をもとに捕食時に発生する流体力の数値計算を行った.後述するように,初年度に行った計算結果を踏まえ,捕食時に発生する応力分布(局所的な力の分布)が骨格構造の形態と深く関係していると判断し,捕食時の応力分布を求められるようにプログラムの変更を行った.プログラムには,自動的にパラメータを変更して最適形状を求めるような仕組みを導入する予定であったが,この仕組みを完成するまでに至っていない. また,初年度の結果について国際会議で発表および執筆を行った.第15回国際放散虫研究集会(InterRad XV)において,前年度に取り組んでいた軸対称に近似できる骨格をもつ放散虫の捕食時における仮足の引張力の推定に成功したという内容の講演を行った.この研究内容の執筆がほぼ完了している.この結果から,放散虫は断面の形状を変えることなく骨格の形状を変更することで,捕食に必要な力の大きさを変えることなく扁平な形状に進化を行った可能性があることが判明している. そのほかに,新たに大きなくぼみをもつ放散虫 Didymocyrtis tetrathalamus のデータの分析を行った.この種は特徴的な形であり,さまざまな時代において普遍的に採集されるため,その形状の意義を化石と現生試料の両方から探れるという利点を持っている.現在のところ,鼓状の形状の意味と孔の分布の不規則性についての検討が中心であるが,整理が終了次第に流体力学的な検討に入る予定になっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究当初は軸対称ではない形状をもつ骨格をもった放散虫の周りの数値計算方法が確立されていなければならないが,そこまで到達していない.そのため,「やや遅れている」と自己判断した.これは,前年度に行った計算から得られた結果が「粘性抵抗の合力は形態の多様性には影響しない」という,当初の予想とは異なる結果のためである.しかし,この結果が意味することから「局所的な力が多様性を生む」という新たな作業仮説が生まれ,それをもとにした計算の結果が出始めている.これは,本研究課題の今後の進展の可能性を示すものである.進捗は少し遅れているものの,計画時に考えていた計算手法の確立は可能であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,複雑な形状を観察する機会を増やすことを検討している.そのひとつとして,性能の良い光学顕微鏡の導入を予定している.また,3Dデータを取得する機会を増やすことも予定している.平成29年度の研究を国際学会にて発表し広く意見を求めることで,今後の研究を推進していくことも検討している.
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Causes of Carryover |
進捗状況でも説明したように,当初の予想とは異なる結果が出たために,新たな作業仮説に基づいてシミュレーションを行っている.この対応に要した時間のために進捗がやや遅れ,結果として予算の執行も遅れてしまった.次年度は繰越分を観察システムの充実にあて,その他については当初の計画通りの執行を予定している.
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