2017 Fiscal Year Research-status Report
Hilbert 保型形式のShimura対応とその応用
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16K05056
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
露峰 茂明 三重大学, 教育学部, 特任教授(教育担当) (70197763)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Hilbert modular form / Shimura lift / Class number |
Outline of Annual Research Achievements |
1973年のG.Shimuraの論文"On modular forms of half integral weight"に初めて現れた志村対応は、楕円保型形式のカスプフォームに限定したものであった。その後の多くの研究者がこの研究に参入したが、カスプフォームに限定しない方向への拡張も目指された。この方向の応用のひとつは数論的なL関数の特殊値を、あるいは代数体の類数を求めることにある。条件付きであるがヒルベルト保型形式の場合のカスプフォームに限定しない志村対応を完成し、"On Shimura lifting of Hilbert modular forms"のタイトルの論文を現在投稿中である。ルート2を含む2次体上の、あるいはルート5を含む2次体上の、虚2次拡大の体の類数を求めるための公式も構成した。 対象となる代数体の範囲を広げるためにも更なる研究が必要となる。ヒルベルト保型形式をヒルベルト保型平面上のモジュラー曲線に制限すると楕円保型形式が得られる。この楕円保型形式同士のピーターソン内積の計算が有効そうであることが分かった。ピーターソン内積は、Peterssonにより1949年の論文に"Uber die Berechnung der Skalarprodkte ganzer Modulformen"により与えられ、少なくともひとつがカスプフォームの場合にだけ定義されている。その後1981年に、Zagierがカスプフォームに限定しない形でピーターソン内積を定義している。しかしこれは対応する群が一番大きな場合限定であって、一般の場合の研究はまだ十分行われていない。またあるいは半整数の重さを持つ楕円保型形式についても行われていない。現在この部分の研究が進行中であり論文の形にまとめたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部のではあるが、4次のCM体の類数の計算法を得られたことは、研究目的の一部ではあるが果たせたと思っている。ピーターソン内積を調べることは当初予定にはなかったが、研究成果を得るためには避けられない道のようである。当初の予定からすると迂回路を通っているように見え、そのために研究が遅れているように見えてしまうことにはなるかもしれない。 ただこの研究自体も、単独で整数論に貢献しそうな深い内容を持っている。ランキンやセルバーグは重さ0のアイゼンシュタイン級数の解析的性質が、積分を通してある重要なカスプフォームから作られるL関数の解析的性質を証明してる(Rankin, "Contributions to the theory of Ramanujan's function tau(n) and similar arithmetic functions, I"、Selberg,"Bemerkungen uber eine Dirichletsche Reihe, die mit der Theorie der Modulformen hahe verbunden ist")。ピーターソン(Petersson, "Uber die Berechnung der Skalarprodkte ganzer Modulformen")はふたつのカスプフォームの内積から作られるL関数の解析的な状況が、やはり重さ0のアイゼンシュタイン級数の解析的性質から分かることを示している。重さ0のアイゼンシュタイン級数以外のアイゼンシュタイン級数を用い、群も一般化させることに成功すれば成果となるはずである。一部は既に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
重さも指標も異なる場合を含むカスプフォームに限らないふたつの楕円保型形式のピーターソン内積を構成すること、その値がそのふたつの楕円保型形式から生ずるL関数の、あるところでの特殊値になること、あるいはあるところでの留数になることを示す。Zagierの結果の一般化である。これが完成後に本来の研究テーマに戻り、楕円保型形式のピーターソン内積を用いてヒルベルト・アイゼンシュタイン級数のフーリエ級数を調べる。この定数項に虚2次拡大体の類数に付いてのデータが含まれているはずである。
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Causes of Carryover |
(理由)購入予定の書籍が年度内に入荷しなかったため。 (計画)平成30年度に購入する書籍に使用する。
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