2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K05058
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上岡 修平 京都大学, 情報学研究科, 助教 (70543297)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 平面分割 / 直交多項式 / 数え上げ組合せ論 / 代数的組合せ論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平面分割は,数え上げや,母関数の計算が厳密に行える組合せ論的オブジェクトのひとつであり,組合せ論や表現論などの観点から,さらには物理学への応用も含めてさかんに研究されている.こうした研究の発展は,数学的に扱いやすい積型の母関数の存在に根ざす部分が大きく,現在では積型の「よい」和公式の新たな発見が求められている.本研究では,平面分割のよい和公式を,双直交多項式を用いて系統的につくる手法を開発し,それに基づき新たなよい和公式をつくることが目的である. 平成28年度には,双直交多項式に対して格子路を用いた組合せ論的解釈を与えた.さらにそれを通して,双直交多項式から平面分割のよい和公式をつくるための手法を新たに開発した。この手法は,任意の双直交多項式の族に対して適用可能な一般的なものである.特に双直交多項式の族として,古典直交多項式のひとつであるlittle q-Laguerre多項式に着目し,同多項式の満たす隣接関係式と直交関係式から,平面分割に対するよい和公式を新しく導出することに成功した.また別の双直交多項式の族として,little q-Laguerre多項式を多パラメータ拡張した一般化little q-Laguerre多項式を導入し,同多項式からさらに一般化された平面分割の和公式を得ることに成功した.これら成果物にあたる和公式は,平面分割の研究の端緒にあるMacMahonの公式,その再興に大きく寄与したStanleyによるトレース母関数,およびそれを多パラメータ拡張したGansnerによるトレース母関数のすべてを一般化するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の当初計画では,主に次の3点の実施を予定していた.(1)双直交多項式の格子路による解釈.特に双直交多項式に付随する線形汎関数のモーメントに対する,格子路による組合せ論的な明示式を導出する.(2)双直交多項式による,非交叉格子路の(重み付き)母関数の積表示.特に双直交多項式の明示式などに現れるモーメント行列式に着目し,Gessel―Viennot―Lindstromの補題を用いることにより,非交叉格子路の母関数と同一視できることを示す.(3)平面分割のよい和公式への翻訳.すなわち(2)で得られた積表示を持つ非交叉格子路の母関数を,非交叉格子路と平面分割の間の一対一対応を通して,平面分割の母関数に書き直す. 平成28年度には,この3点をすべて実施し,本研究全体の基礎理論を構築した.さらにそれをlittle q-Laguerre多項式などのいくつかの具体例に適用することにより,平面分割に対するよい和公式の具体例の導出にも成功している.このように本研究は当初計画通りに進行しており,そこで得られた基礎理論の有効性についても確認済みである.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降では,本研究で構築した手法に基づき,平面分割のよい和公式のさらなる具体例を計算する.特に(little q-Laguerre多項式を含む)古典直交多項式を分類したAskeyスキームに着目し,同スキームに属する直交多項式のそれぞれから平面分割のよい和公式を導出し,その性質を詳細に調べる.特に同スキームの頂点にいるAskey―Wilson多項式とq-Racah多項式から,同多項式と同数の5パラメータを含む和公式を導出する.またAskeyスキームに属する古典直交多項式を多パラメータ拡張することにより,それらの和公式をさらに一般化することを目指す.具体的な計算には,双直交多項式に関連する力学系(離散二次元戸田分子方程式)やパデ近似の技法を援用するため,それらに対しても,格子路などによる組合せ論的解釈を探す. 本研究では,Askeyスキームに属する直交多項式の拡張など,既存の古典直交多項式の範疇に収まらない双直交多項式を新たに導入して利用する.そのため,そうした新しい双直交多項式そのものに対しても,代数的・解析的によい性質(直交関係などの明示式,微分・差分方程式による特徴付け,上昇・下降演算子の存在など)を持つかどうかを調べる.よい性質が見つかった際には,その成果を平面分割の研究にフィードバックして,新たな和公式の発見につなげる.
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Research Products
(14 results)