2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05058
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上岡 修平 京都大学, 情報学研究科, 助教 (70543297)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 平面分割 / 直交多項式 / 数え上げ組合せ論 / 代数的組合せ論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平面分割は,数え上げや母関数の計算が厳密に行える組合せ論的オブジェクトのひとつであり,組合せ論や表現論の観点から,また物理学への応用も含めてさかんに研究されている.こうした研究の発展は,数学的に扱いやすい積型の母関数の存在に根ざす部分が大きく,現在でも積型の「よい」和公式の新たな発見が求められている.本研究の目的は双直交多項式などの道具を用いて平面分割のよい和公式を系統的につくる手法を開発し,それに基づき新たなよい和公式を具体的につくることである. 平成29年度には,離散可積分系のひとつである離散2次元戸田分子に着目し,その発展方程式に対して格子路による組合せ論的解釈を与えた.またそれの応用として,離散2次元戸田分子の解から平面分割の和公式をつくるための手法を新たに開発した.その帰結として離散2次元戸田分子の特殊解から,任意枠の逆平面分割に対するGansnerの対角和母関数を拡張する和公式をつくることに成功した.ここで開発した手法は,双直交多項式と離散2次元戸田分子の間の関係から生まれたものであり,前年度に開発した手法を踏襲,拡張するものである.特に長方形枠に限らず任意枠の(逆)平面分割に対して適用可能になっている.本年度にはまた,対称性を持つ平面分割についても研究し,対称平面分割の既存の積型の母関数を一般化するような和公式の予想式を得た.この結果はパフィアンとの関連が深く,そちらからのアプローチが予想の証明につながると期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の当初計画では次の2点の実施を予定していた.(1)前年度につくった双直交多項式よる手法に基づき,平面分割の新たなよい和公式をさらに見つける.その一助とすべく(2)離散2次元戸田分子などの双直交多項式に付随するオブジェクトに対して格子路による組合せ論的解釈を与える. 本年度の研究では,双直交多項式に付随する力学系である離散2次元戸田分子に着目し,その発展方程式に対して格子路による組合せ論的解釈を与えた.さらにそれに基づき,離散2次元戸田分子の解から(逆)平面分割のよい和公式をつくるための手法を新たに開発した.その応用として,既存の積型の母関数の拡張,精密化ともいうべきよい和公式を実際につくって見せた.このことから当年度における本研究の当初計画はおおむね達成できたと言える. 当年度には他に,当初計画にはなかった対称平面分割のよい和公式に関する研究も行った.その成果として,既存の積型の母関数を統合,精密化するようなよい和公式の予想を得ることができた.このように本研究の一部は当初計画をこえて進展しつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる平成30年度には主に次の2点を実施する.(1)古典直交多項式に基づく平面分割のよい和公式の構成.Askeyスキームとして分類されている古典直交多項式に本研究の手法を適用することで,平面分割のよい和公式を導出する.具体的には,平成28年度にlittle q-Laguerre多項式に対して行ったように,Askeyスキームに属するAskey-Wilson多項式やbig q-Jacobi多項式などの古典直交多項式を対象として,多パラメータ拡張やそれに基づく平面分割のよい和公式の導出などを行う.その際の考え方や解析手法は前年度までの成果を踏襲する.多パラメータ拡張などの研究の過程で得られる新しい双直交多項式に対しても,代数的,解析的な性質(直交関係などの明示式,微分・差分方程式による特徴づけ,上昇・下降演算子の存在など)を調べる.よい性質が見つかった際には,その成果を平面分割の研究にフィードバックして新たなよい和公式の発見につなげる. (2)対称平面分割に対するよい和公式の系統的構成法の開発.前年度の研究の中で見つかった対称平面分割のよい和公式の予想を証明すべく,さらにはより一般の和公式の導出を目指して,対称平面分割のよい和公式の系統的構成法を開発する.その道具としては,平面分割の研究において双直交多項式を用いたように,その変種でありパフィアンと深い関係にある歪直交多項式を利用する.
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Research Products
(10 results)