2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05059
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 愛一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10283590)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 有理性問題 / ネーター問題 / 代数的トーラス / 有限群の作用による不変体 |
Outline of Annual Research Achievements |
もともとのネーター問題は、有限群Gが体k上の|G|変数有理関数体に変数の置換として作用するとき、その不変体k(G)はk上有理的(すなわち純超越的)かという問題であった。 基礎体kが複素数体Cのときに有限生成アーベル群Mへの純単項式作用による不変体C(M)^Gの有理性に一般化した問題を考えた。この場合、不分岐ブラウアー群Br_{nr}(C(M)^G)が非自明な場合は有理性問題不成立なことが言える。Mの階数をrとしたとき、Mへの作用はGL(r,Z)の有限部分群の共役類と同一視できる。 そこでrankが6以下のG-latticeに対して、Br_{nr}(C(M)^G)が非自明な場合を完全に決定した。階数3以下の場合はBr_{nr}(C(M)^G)はすべて自明であるが、階数r=4(resp. 5,6)のときはGL(r,Z)の710個(resp. 6079個,85308個)の有限部分群のうちBr_{nr}(C(M)^G)が非自明なものは4個(resp. 46個,1073個)ある。 また、位数8n (resp. 16n, 8n, p^3 (p≠2))の二面体群 (resp. 四元数群, 準二面体群,extra special group)にその結果を拡張した。階数6以下でBr_{nr}(C(M)^G)が非自明になるものはすべて非可換可解群であるが、階数7の基本アーベル群のGL(7,Z)共役類をすべて分類し、Br_{nr}(C(M)^G)が非自明になるものを完全に決定した。全部で9個あり、いずれも位数8であった。非可解群については、6次の交代群A6で階数9の例を二つ見つけた。はPSL(2,9)と同型なので、S10の可移部分群として実現できる。そこから階数9のノルム1トーラスが得られるが、それが属するGL(9,Q)共役類は6個のGL(9,Z)共役類に分かれる。そのうちの2個がBr_{nr}(C(M)^G)が非自明である。 これらの結果はarxiv:1609.04142に公開済みで、論文として投稿中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の欄に書いた実績は、不分岐ブラウアー群Br_{nr}(C(M)^G)を具体的に計算することから始まった。Bogomolov multiplier(B0(G))と呼ばれるものは以前からよく計算されていた。しかしB0(G)は群Gの同型類のみによって定まる量である。GのMへの純単項式作用部分によって定まる量H_u^2(G,M)に着目した。今の場合、Br_{nr}(C(M)^G)はB0(G)とH_u^2(G,M)の直和になる。 主に夏に台湾大学で、台湾大学のKang先生,新潟大学の星さんと3人で議論して研究を進めた。まずH_u^2(G,M)を計算機で計算するプログラムを組んだ。そして、計算量をなるべく減らすための理論的な工夫をしながらrank 6以下のBr_{nr}(C(M)^G)が非自明な場合を完全に決定した。rank4ではH_u^2(G,M)が自明でないものはちょうど5個あった。そこでその5個について、結果を一般のrankに拡張することを考えて、5個のうち3個について成功した(二面体群,四元数群,準二面体群のとき)。また、C_2^3,A_6の例は、それぞれGがアーベル群の場合,Gが非可解の場合でBr_{nr}(C(M)^G)が非自明になる最初の具体例である。
|
Strategy for Future Research Activity |
代数的トーラスのstably equivalent class の分類を考える。stably equivalent classの不変料としてはШがよく用いられているが、それに加えて新たな不変量を定義したりweakly stably equivalent と言う新しい概念を定義したりする必要が出てきた。今までrank 3についても不完全な分類しか得られていなかったが、全容がわかってきた。rank 4の場合まで分類を完成させることを目標とする。 不分岐コホモロジーについては、H_{ur}^3,H_{ur}^4を使った有理性問題を手掛けてみたい。 2017年の夏も台湾大学に行き、台湾大学のKang先生,新潟大学の星さんの3人で議論しながら研究する予定である。その時に、今考えている問題の解決の糸口が見つかったり、新たなテーマが見つかったりすると考えられる。
|
Remarks |
論文中で使用しているコンピュータープログラムを公開している
|