2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05067
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
伊藤 稔 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (60381141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 詔 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (60547553)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Cayley-Hamilton定理 / Pfaffian / 不変式論 / Schur多項式 / 1の原始冪根 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、高階のCayley-Hamilton型定理とこれが生成元の関係式を記述する不変式論について研究した。とくに今年度は、Pfaffian版のCayley-Hamilton定理の高階版とこれが関わる不変式論について整理した。問題となる不変式の空間には、多項式環と対称群のwreath積の自然な作用が考えられ、この環の上の加群として単一生成である。この生成元の関係式を論じたいのだが、多項式環と「有限集合のパーフェクトマッチング全体の集合」のあいだの一種のwreath積を考えて、ここからの全射準同型の核を記述するというかたちでまとめた。この核が結局Pfaffian版のCayley-Hamilton定理の高階版で生成されるのである。 今年度はまた日高昌樹氏との共同研究でSchur多項式の特殊値の研究を行った。主結果は「自然数nが2以外の素因数を高々2個しかもたないとき、1の原始n乗根におけるSchur多項式の値は1, 0, -1のみ」というものである。nの条件は比較的ゆるく(たとえば105未満の自然数はすべて該当)、分割には何の条件もない。非常に多くの自然数nと分割に対して、この値が1, 0, -1にかぎられるのは興味深い。本結果は(1^k)と(k)という分割の場合には既知の結果だった。(1^k)の場合は「条件をみたす自然数nに対して、n次の円分多項式の係数は1, 0, -1のみ」という19世紀から知られている有名な事実に当たる。また(k)の場合は、本結果は円分多項式の逆数の係数の性質に言い換えられるが、これは10年ほど前にP. Moreeが与えた結果がある。このような特別な分割の場合に知られていた結果を、一般の分割に拡張したのが今回の結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
想定内の進展として、Pfaffian版のCayley-Hamilton定理の高階版とこれが関わる不変式論については、一応の整理がついた。また想定外の進展として、日高氏との共同研究でSchur多項式の特殊値に関する興味深い結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
行列式版、およびPfaffian版の高階のCayley-Hamilton定理について、これらで記述される不変式論はひとまず整理できた。同じようなタイプの不変式論を調べていると、行列式やPfaffianが融合したものが登場する高階のCayley-Hamilton型定理が必要になる場面がある。この定理も視野に入れて考察したい。Schur多項式の特殊値に関する研究については、表現論との関係を探りたい。
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Research Products
(10 results)