2016 Fiscal Year Research-status Report
平面分割・タイリングの数え上げと対称関数・パフィアン・行列式の研究
Project/Area Number |
16K05068
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石川 雅雄 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (40243373)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 聡一 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (20224016)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | タイリング問題 / パフィアン / 行列式 / Schroder Path / LGV Lemma / 数え上げ問題 / 数理物理 / 交代符号行列 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年にはカナダ(バンクーバー)のサイモン・フレーザー大学で開催された第28回形式的冪級数と代数的組合せ論に関する国際会議に参加し、Fully packed loops やシューア多項式についての興味深い多くの講演を聴いた。また、内外の研究者と交流を行った。2016年9月には、イギリスのサザンプトン大学名誉教授である Ron King 氏を訪問した。また、フランスのリヨン大学を訪問し、Jiang Zeng 氏と直交多項式とパフィアンについて。また Frederic Jouhet 氏とはマクドナルド多項式についての共同研究を行った。2016年9月20日にリヨン大学で The domino tilings of Aztec rectangles with holes and the Gauss hypergeometric series という講演を行った。また、9月11~15日にオーストリアで開催された Seminaire Lotharingien de Combinatoire に参加して、代数的組合せ論の興味深い講演を聴いた。2017年3月には、パリのポアンカレ研究所で開催された Combinatorics and Interactions の中でEnumerative Geometry のワークショップ に参加して、内外の研究者と交流した。Foda や Arun Ram が来ていた。パリの次はリヨン大学に滞在し、Jiang Zeng 氏とパフィアンの評価と多変数直交多項式について共同研究を行った。また Lyon を訪れていた Lin 氏とも研究を行う機会があった。最後に、3 月 26~29 日に開催された Seminaire Lotharingien de Combinatoire では ThibonFest として、興味深い講演が多かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
穴のあるアステカ長方形のドミノ・タイリングの数え上げ問題についての研究は、これまでと違って、パスを領域の両側に取ることにより、1つの行列式にする新しい方法を考案した。これはドミノ・タイリングと Schroder path の非交差経路の組の間の一対一対応を考えて、Lindstrom-Gessel-Viennot の補題を用いて行列式の和にする。これに行列のラプラス展開の公式をあてはめることにより、1つの行列式の計算に帰着する。また、ドミノ・タイリングの中で180度回転で不変なものの数え上げでも、代表元の領域を切り出してきて、同様に非交差経路の組の間の一対一対応を作り、やはり行列式で書けるという結果が得られた。穴のあるアステカ長方形の180度回転で不変なドミノ・タイリングの数え上げ問題に関しては、今回が初めての試みである。また、180度回転不変性を考慮しない数え上げ問題では、以前の方法で別の形の行列式が得られていた。この行列式の成分は Schroder path の個数であるガウス超幾何級数で与えられる。この行列式を目標の予想の形にするには、いろいろな超幾何級数の変換公式が必要になると思われる。特に隣接関係式は基本で、それを組み合わせた超幾何級数の変換公式を使って行列式の変形が必要になる。このためには母関数を使う手法が有効である。穴がない場合は、この数え上げ行列はハンケル行列であり、Riordan 行列を使って LU-分解することができる。穴のある場合はハンケル行列である部分とそうでない部分にブロック行列化されており、疑似 LU-分解するための適当な Riordan 行列を求めるためには、成分の母関数を使って行列を変形する。これらの行列の成分が超幾何級数であることから、直接、成分を扱うことは議論を冗長かつ複雑にする。
|
Strategy for Future Research Activity |
穴のあるアステカ長方形のドミノ・タイリングの数え上げ問題についての研究では、交代符号行列との関係が興味深い問題である。穴のない場合は、高さ関数が定義され、Monotone Triangle を通して、交代符号行列の組との対応が作れ、数え上げ問題との関連が深かった。しかし、穴がある場合には、高さ関数の定義が難しく、交代符号行列との関係がこれまでの方法では定義できない。これを解決するのも興味深い問題である。2017年には、まず、リヨン大学の Frederic Jouhet 氏が5月に来日予定である。彼は岡山大学に滞在し、Bounded Littlewood Identities についての共同研究を行う予定である。特に、マクドナルド多項式とコーンワインダー多項式について、私は Jouhet 氏と共通の興味があり、コーシー型やリトルウッド型の公式のいろいろな変形について共同研究をする予定である。また、6月終わりには MIT の Richard Stanley 氏が岡山大学に来る予定である。私は2015年夏に学習院大学の中野史彦氏と MIT を訪問した。Stanley 氏は最近でも Smith Normal Form と Jucys-Murphy element の関係等の面白い研究をしている。Stanley 氏の訪問の折には、熊本大学の山田氏も来て研究打合せを行う予定である。7月には、ロンドンで行われる第28回形式的冪級数と代数的組合せ論に関する国際会議に参加する予定である。また、9月にはイタリアで、2018年3月にはフランスで Seminaire Lotharingien de Combinatoire が開催予定である。日本でも10月に数理解析研究所で和地氏による表現論と組合せ論に関する短期共同が開催予定であり、参加したい。
|
Causes of Carryover |
当初、2017年初めにフランスのポアンカレ研究所で開催される Combinatorics and interactions というプログラムで開催されるいくつかのワークショップに2月末から参加したいと思い、多めに予算を残しておいた。しかし、2月に入試やその他の業務が重なり参加することが難しくなったために3月になってから幾何学的諸問題に現れる組み合わせ論のワークショップのみに参加することにして、予定よりも旅費の使用が少なくなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度にはフランスのリヨン大学の Frederic Jouhet 氏が5月19日から6月7日まで来日する。特に5月30日以降は岡山大学に滞在して、マクドナルド多項式やコーンワインダー多項式についての共同研究を行う予定である。特にコーシー型の公式とリットルウッド型の公式については共通の興味があり、その準備として Warnaar の論文を読んでいる。その他に、MIT の Richard Stanley が来日し、岡山大学にも滞在予定なので、その滞在費の補助に使う。
|