2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K05073
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
山内 博 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (40452213)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 頂点作用素代数 / 3互換群 / グライス代数 / 単純カレント |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度に始めた Cuipo Jiang 氏および Ching Hung Lam 氏との共同研究の内容を論文にまとめ,プレプリントサーバーに公開するとともに,学術雑誌に投稿した。証明の核となるアイデアは2016年度の段階でほぼ得られていたが,細部を詰めるのに時間がかかった。この論文ではシグマ型イジング元で生成されるOZ型単純頂点作用素代数の一意性を示した。このような頂点作用素代数には3互換群が自然に作用しているが,特にA型のワイル群の場合には,単純性の仮定を外せることも示した。一つの応用として,松尾氏によって示された,シグマ型イジング元から生ずる3互換群の分類において,頂点作用素代数の正定値性条件をその有限次元部分構造であるグライス代数の正定値性に弱めることができた。 上記論文で扱った,ADE型ワイル群に対応する頂点作用素代数はすべて abelian coset construction と呼ばれる手法により実現されているが,このような構成法を包括する,一般的な状況を考えると,これは既約加群がすべて単純カレントである頂点作用素代数と,有理型頂点作用素代数のテンソル積の単純カレント拡大として得られる頂点作用素代数における coset construction に他ならない。このような一般的な状況において,coset construction で得られる頂点作用素代数と,拡大として得られる頂点作用素代数の表現圏を互いに記述する理論を中央研究院の山田裕理氏と共同で研究し,モジュラーテンソル圏におけるフェアリンデ公式が適用できる,よい頂点作用素代数については,上記の二つの表現圏をアーベル圏としてだけではなくフュージョン積も含めて互いに完全に記述する結果を得た。この成果を論文にまとめ,2018年4月にプレプリントサーバーにて公開した。この論文は近々学術雑誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度に始めた共同研究の結果を改良し,シグマ型イジング元で生成される頂点作用素代数の正定値性を,その有限次元部分空間であるグライス代数の正定値性に帰着する結果を得た。 また,上記研究で現れる頂点作用素代数の拡大を一般的な状況で考察し,交換団部分代数と拡大された頂点作用素代数の表現圏を二次形式を伴ったアーベル群による軌道分解を用いて相互に記述する有用性の高い結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
シグマ型イジング元で生成されるOZ型頂点作用素代数は頂点作用素代数の構造論からその自己同型群が記述できる極めてよいクラスである。付随する自己同型群がA型のワイル群の場合にはグライス代数に対応する松尾代数の構造が非退化であり,特に扱いやすいサブクラスとなっている。まだ初期の研究段階であり,未完成の理論であるため,ここでは詳細を伏せるが,現在A型ワイル群を経由して頂点作用素代数を用いた散在型有限単純群の構成へと繋がる研究を進めている。今年度以降もこの課題の研究に取り組む。
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Causes of Carryover |
2017年夏期に共同研究のため台湾へ長期出張し,前年度の繰越金は予定通り旅費として消化できたが,授業等,学内業務が忙しく,出張を控える必要があったため,本年度分の旅費が想定より少ない額であった。2018年度は京都大学数理解析研究所のプロジェクト研究の組織委員を務めており,国内外から多くの研究者を呼び寄せ,研究集会および研究討論が数多く予定されている。繰越額はそのための旅費に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)