2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K05085
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
長岡 昇勇 近畿大学, 理工学部, 教授 (20164402)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 保型形式 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は古典的に研究されてきた保型形式を多変数に拡張した多変数保型形式の整数論的性質を研究してきた。特に多変数を研究することにより古典的な一変数保型形式の性質が明らかになる場合がある。報告者はテータ作用素の整数論的性質とくに素数pを法とした性質を多変数保型式の典型的な例であるジーゲルモジュラー形式やエルミートモジュラー形式の場合に調べてきた。発端は前研究で発見したいわゆるIgusaの奇数weight 35のジーゲルモジュラー形式のテータ作用素の像が「素数23を法として消える」という現象である。これは後に証明が与えられたが、このような現象が孤立したものであるかどうかが問題であった。当該年度の研究の成果は二つあり、一つは二次形式のテータ級数から作られるモジュラー形式に同様の現象が見つかったことである。24次元の正定値ユニモジュラー偶形式はNiemeierにより分類され、24種類あることが証明されている。これらの形式(格子)に付随するテータ級数を考える。成果はこのNiemeier格子のなかの2個が上述のIgusaのモジュラー形式と同様の性質、すなわちテータ作用素の像が23を法として消えることを発見し、証明を与えたことにある。二番目の成果は、エルミートモジュラー形式の場合にテータ作用素の像が素数pを法として消えるものを発見したことにある。これまでエルミートモジュラー形式の場合にはそのような例、すなわちテータ作用素の像がpを法として消えるような例が見つかっていなかったが、菊田俊幸氏との共同研究により、2次の場合weightがp+1のアイゼンシュタイン級数と呼ばれるモジュラー形式がそのような性質を満たすことを発見した。ただしここで素数pは対応する虚二次体で素数のままという条件が必要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報告者の目標は、素数pを法とするテータ作用素の核に入るモジュラー形式を特徴付けることであった。この期の研究目標としては、次数の低い場合にそのような例をなるべくたくさん見つけ、それらに共通の性質を抽出しようとするものであった。その点ではジーゲルモジュラー形式、エルミートモジュラー形式の場合に成果があったと評価できる。ただし得られた結果は、ジーゲルモジュラー形式の場合は次数が2と3の場合、エルミートモジュラー形式の場合は次数2の場合だけであり、一般の次数に研究することが次の目標である。すなわち、目標は、これまでの成果を基にし、一般の次数の場合にテータ作用素のmod p核に入るモジュラー形式を発見していくことにあり、次数の高いモジュラー形式のフーリエ係数の数値例の計算がすでに実行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」でも述べたように、目標はジーゲルモジュラー形式やエルミートモジュラー形式の場合に、テータ作用素のmod p核に入るようなモジュラー形式の特徴付けの完成にあるが、これはすでに研究が開始されており、フーリエ係数の数値計算が進行中である。偶数次ジーゲルモジュラー形式の場合は奇数weightのモジュラー形式が存在する可能性がある(次数2の場合はIgusaのweight 35のモジュラー形式)が、4次の場合weightが19, 21のところに奇数weightのモジュラー形式が存在することが知られているが、これがテータ作用素に関してどのような性質をもつか解明していきたい。すなわち「奇数のweightをもつモジュラー形式はテータ作用素のmod p核に入る」という予想をたて、検証することを目標としている。このためジーゲルモジュラー形式の場合はジーゲルモジュラー形式に関する世界的権威であるドイツ・マンハイム大学ベッヘラー教授、エルミートモジュラー形式の場合は同じくこの分野の権威であるドイツ・アーヘン工科大学のクリーク教授と緊密な連絡をとって研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
物品費として購入予定のものの購入申請が遅れ次年度申請となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
数値計算研究の実行のためハードディスクドライブ等の購入を予定している。
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