2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K05088
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
深澤 知 山形大学, 理学部, 准教授 (20569496)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ガロア点 / 準ガロア点 / ガロア群 / 射影 / 射影代数多様体 / 正標数 / ガロワ点 / 自己同型群 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガロア点を用いた射影多様体の分類、ガロア点と他分野との関係の創出、という2つの目的のもと研究を行なった。射影空間内の点PがCに対するガロア点であるとは、点Pからの射影が呈する関数体の拡大がガロア拡大となるときに言う。 前年に得られた「ガロア点を複数もつ平面への双有理埋め込みをもつ」判定法を利用して、有理曲線、Deligne-Lustzig曲線(に属するHermitian, Suzuki, Ree曲線)、(ある種の)Artin-Schreier曲線という3つの系統についてガロア点を複数もつ双有理埋め込みを構成することができた。 有理曲線については、脇克志氏(山形大学)の協力を得て「4種」発見した。脇氏には計算機探索をお願いした。その探索で得られた結果を手計算に落とし、計算機を必要としない証明をつけることもできた。Artin-Schreier曲線については、山形大学院生の東根一樹氏との共同研究により得られた。後者2つの結果により、Hennの(大きな自己同型群をもつ曲線の)分類リストに現れる4種の曲線すべてについて、ガロア点を複数もつ双有理埋め込みが存在することを示すことができた。以上によりガロア点を複数もつ平面曲線が新たに「10種」発見された。 他方、2つの外ガロア点が生成する群に注目し、バジリカータ大学(イタリア)のPietro Speziali氏と共同研究を始めた。2つの外ガロア点をもち、それに付随する2つの群による生成群が位数d^2の半直積であるとき、その平面曲線の定義方程式を2種に分類することができた。ひとつはフェルマー曲線であり、もう一つは高橋剛氏が考察した曲線x^d+x^(d/2)+y^d=0である。 非特異平面曲線の準ガロア点については、その個数の評価をよりシャープにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
中心課題「はめ込み平面曲線のガロア点分布」に関連して、ガロア点を複数もつ曲線の上記10種の例の構成は「順調な進展」といえる。Speziali氏との共同研究においては「群」への制約を利用して代数曲線を特徴づけた。当初計画では「個数」(だけ)に注目するつもりであったため、予期せぬ進展を含みこの点については進捗状況の判定が難しい。この2つを合わせた部分は「順調な進展」と判断した。また、準ガロア点の個数についても「順調な進展」と判断できる。 脇氏と発見した例は、前年度に得られた判定法が大きく関係している。この判定法は有理曲線の場合には、完全に「群論」の言葉で表現することができる。代数学の中という小さい境界ではあるが「群論と代数幾何の分野横断研究」と言え、目的のひとつである「ガロア点と他分野との関係」の一つの達成といえる。 Deligne-Lusztig曲線というクラスに属するHermitian, Suzuki, Ree曲線については、これらの有理点とそれに作用する有限群(PGU、Suzuki群、Ree群)を利用して平面への双有理埋め込みを構成した。「有理点と群」が関係しており、「他分野との関係」のひとつの達成といえる。さらに、これらは極大曲線(Hasse-Weil上限に到達する曲線)の理論で重要視されており、今回の結果はガロア点理論における極大曲線の扱い方のひとつを提唱する成功例である。 Hermitian, Suzuki曲線と東根氏との共同研究で扱ったArtin-Schreier曲線は大きな自己同型群をもつ曲線として知られており、Hennの分類した4種がこれらに含まれる。「ガロア点と大きな自己同型群」の関係が見出された点は注目に値する。 以上を「他分野との関係」については「計画以上の進展」と判断した。以上を総合的に評価し、「計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ガロア点2つを伴う双有理埋め込みの判定法により、ガロア点の個数確定へ十分な結果が得られているため、この研究を継続する。「他分野との関係」として有理点・符号理論との関係の研究も継続する。他方、「群」との関係にも注目したい。 研究計画当初の準ガロア点の個数に関する研究、ならびに「無限個の準ガロア点」研究も行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 前年度に白紙になったイタリア出張が今年度復活し、予定していた海外出張と合わせて2回イタリアに出張した。そのことで少なくなった研究費のうちで国内旅費分を残していたが、年度末にいくことを考えていた研究出張ができなかったため、国内旅費1回分が残った。 (使用計画) 国内旅費に充てたい。
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