2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K05090
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
高木 寛通 学習院大学, 理学部, 教授 (30322150)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Q-Fano 多様体 / Key variety / 射影幾何 / 代数多様体の定義方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、研究目的として掲げているQ-Fano 3-foldの定義方程式の記述に関して大きな進展が見られた。以前の研究において、1/2(1,1,1)-特異点しか持たないprime Q-Fano 3-foldの多くのものについて、それを完全交叉として含む4次元以上の多様体を構成していた。この多様体のことをprime Q-Fano 3-foldのkey varietyと呼ぶ。当該年度は、このkey varietyの定義方程式を具体的に求める研究を行い、きれいな形でその記述を得ることに成功した。結果的に完全交叉として得られるprime Q-Fano 3-foldの定義方程式の記述もできたことになる。きれいな形での記述できたというのは、方程式をバラバラに列挙するのではなく、行列を用いることで(例えばその積、行列式、交代行列ならPfaffianなど)記述できたということである。これは非特異なprime Q-Fano 3-foldの場合のkey variety, グラスマン多様体G(2,6), 直交グラスマン多様体OG(5,10)などの記述と非常に近いものである。この記述の恩恵として、key varietyを射影幾何的に得る簡明な方法を得ることにも成功した。例えば、グラスマン多様体 G(2,5)をその外にある点から射影して得られる多様体をVとする。Vは射影空間P^8に含まれるが、これを重射影空間P(1^9,2)の2次超曲面と考える。P(1^9,2)をVに沿って爆発し、MMPを走らせてP^8の固有変換をつぶすと、一つのprime Q-Fano 3-foldに対するkey varietyが得られる。これは、G(2,5)を含むP^9をP^10の超平面とみなし、P^10をG(2,5)に沿って爆発して、P^9と固有変換をつぶしてOG(5,10)が得られることと極めて似ていて興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、研究目的として第一に掲げているQ-Fano 3-foldの定義方程式の記述について大きな進展が見られた。1/2(1,1,1)-特異点を持つprime Q-Fano 3-foldという特別な場合についての結果ではあるが、特異点の仮定を外したprime Q-Fano 3-foldの総数は膨大であり、一歩ずつ着実に研究を進めていくしかないと考えている。当該年度に研究したprime Q-Fano 3-foldのkey varietyは以前に構成していたものではあるが、その定義方程式の記述には成功していなかった。しかし、当該年度はそれに成功し、しかも、思いもよらぬことに、その定義方程式の記述の恩恵として、研究実績の概要で述べたようなkey varietyの射影幾何的に簡明な構成方法が得られたことは大きな収穫と言える。以前より、1/2(1,1,1)-特異点のみを持つprime Q-Fano 3-foldが、非特異な場合と双有理幾何的に似た振る舞いをすることに興味を抱いていたが、key varietyの観点からはこの類似がなにかはっきりしていなかった。しかし、研究実績の概要の最後に述べたように、直交グラスマン多様体OG(5,10)と極めて似ているkey varietyなどが得られることが分かった。他にもそのような例がある。この類似の意味を追求してゆくことは今後の興味深い研究テーマとなる。そのような先に繋がる研究成果を得られたことも、研究の順調な進展を表している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況でも述べた通り、key varietyの定義方程式の記述に成功したことで、key varietyの射影幾何的に簡明な構成方法を得ることにも成功した。そして、それにより、1/2(1,1,1)-特異点のみを持つprime Q-Fano 3-foldと非特異な場合とのkey varietyの観点からの類似性が明らかとなった。今後はこの類似の意味を深く追求していく。例えば、研究実績の概要で述べたOG(5,10)と類似しているkey variety Xの一例については、OG(5,10)の定義方程式が8元数を用いて記述できていることから、Xと8元数との関係を探りたい。また、OG(5,10)は、その射影双対が自分自身と同型となるという自己双対性を持っているが、Xについても適切な意味で自己双対性が見られる。この類似の意味もまだはっきりしていないので追求してゆきたい。その他の場合としては、有名なフロイデンタール魔法陣に出てくる等質空間であるG(2,6)と6次元シンプレクティックグラスマン多様体も非特異なprime Q-Fano 3-foldのkey varietyとして得られることが向井茂氏によって示されているが、これに類似する1/2(1,1,1)-特異点のみを持つprime Q-Fano 3-foldのkey varietyも構成できる。これらのkey varietyについて、フロイデンタール魔法陣の類似が考えられるのか追及してゆきたい。
さらには、1/2(1,1,1)-特異点以外の特異点も持つprime Q-Fano 3-foldについても、key varietyも持ち得るものについてはその構成と方程式の記述を行ってゆく。いつkey varietyを持ち、いつ持たないかも見極めたい。
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Causes of Carryover |
持病の関係で出張の予定を入れなかったため
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Research Products
(2 results)