2022 Fiscal Year Research-status Report
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16K05090
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
高木 寛通 学習院大学, 理学部, 教授 (30322150)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Q-Fano 3-fold / Key variety / Sarkisov link |
Outline of Annual Research Achievements |
3次元の極小モデル理論は、3次元射影多様体の双有理モデルの構成法として確立している。双有理モデルの1クラスをなすのがQ-Fano 3-foldであり、その明示的分類が望まれて久しいが、いまだ完成していない。Q-Fano 3-foldの中でも原子的役割を果たしている素Q-Fano 3-foldというクラスがある。以下、当該研究者が主に研究してきた素Q-Fano 3-foldの場合に限って話をすすめることにする。その分類の1つの視点として、特異点のクラスごと分類するという考え方がある。当該研究者はかつて、この指針に基づき、高々1/2(1,1,1)特異点しか持たない素Q-Fano 3-foldで種数が2以上のものに対して、双有理幾何学を用いた分類(Sarkisov linkによる分類)を行った。これは、非特異素Fano 3-foldのFano-Iskovskihによる分類の拡張である。本年度は、そのうちの5つのクラスについて、それに属するQ-Fano 3-foldが別の観点から分類できることを示した。別の観点の分類というのは、それらが、より大きな次元のQ-Fano多様体(これをkey varietyと呼ぶ)の線形切断として得られるということである。これは、非特異素Fano 3-foldの向井茂氏の分類の拡張である。さらに、key varietyの構成の応用として、key varietyの双対多様体というべきものを定め、それにより、Sarkisov linkによる分類に付随して得られる重要な情報の新解釈を与えた。これも非特異素Fano 3-foldについての向井茂氏の結果の拡張である。以上の結果を2本の論文にまとめ、現在、専門雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Q-Fano 3-foldの数値的データの可能性がリストアップされているが、その数は膨大である。それらの可能性がすべて実現できるのかという問題はあるが、今まで知られている例から察すると、かなりの可能性が実現できる様相を呈している。その全貌を捉えるのは現状では非常に困難であり、そのため、研究実績の概要で述べた通り、特異点のタイプごとに分類するなど、困難を分割する視点が必要であり、その視点に基づいて、一歩一歩分類を進めていく他はない。特異点のタイプの分類に関しては、まだ、1/2(1,1,1)特異点という非常に簡単な特異点を持つ場合であるが、Sarkisov linkを用いた分類と(一部に対してあるが)key varietyを用いた分類という、非特異Fano多様体で成功を収めた2つの分類法を拡張することができた。1/2(1,1,1)特異点をもつ素Fano 3-foldのkey varietyの分類については他の場合にも可能であることが分かっており、先に続く話でもある。一方で、研究実績の概要で述べられなかった別の分類の視点がある。それは、その反標準埋め込みの余次元ごとに分類していくという視点である。余次元1,2,3の場合は反標準環の可換環論的一般論があるために、比較的容易に分類できる。余次元4の場合は、反標準環の可換環論的一般論がないというのが1つの大きな理由として、分類が完成していない。実は、当該年度は、余次元4の分類についても進展があった。詳しくは、今後の研究の推進方策で述べることにするが、以上をまとめると、膨大な数に上るであろうQ-Fano 3-foldの分類の困難を分割する視点が2つあり、当該年度はそのいずれの視点についてもおおむね順調な進展が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で述べた通り、素Q-Fano 3-foldの分類には、反標準埋め込み余次元ごとに分類していくという視点があり、余次元4の場合が未解決問題として残っている。先行研究として、余次元4の数値的データの多くのものに対し、「射影ほどき」という方法で、余次元3の素Q-Fano 3-foldから例が構成されていた。それによれば、多くの余次元4の数値的データ各々に対して、2種のQ-Fano 3-foldの例が構成されていた。その1種はP^2×P^2、もう一種はP^1×P^1×P^1に関係している。また、それらについて、key varietyを用いた新解釈もなされていた。私は、2021年から2022年にかけて、P^2×P^2に関係するこれらの例を精査し、P^2×P^2に関係するということの意味をはっきりさせ、また、key varietyをJordan代数を用いて再解釈することに成功した。P^2×P^2とJordan代数の関係についてはZakのSeveri多様体の仕事でよく知られているが、そのパラメーター付き版を得たことになる。さらに、先行研究では例が構成されていなかった余次元4の数値的データについても、例の構成、key varietyの構成そのものとJordan代数による解釈を同様に得た。これで、ほとんどの余次元4の数値的データ各々に対して、P^2×P^2に関係する例が構成できたことになる。今後の研究の推進方策としては、P^1×P^1×P^1に関係する例を同様にできる限り多くの場合に構成し、それらのkey varietyを構成することで分類問題を進展させることである。実は、すでに当該年度、key varietyの候補は構成でき、また、そのJordan代数を用いた解釈を得ることにすでに成功しているため、来年度は例の構成問題を完成させることを目標としている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、予定していた海外、国内出張が困難であった。また、ほとんどの研究集会がオンラインで開催された。以上の理由により当該助成金の使用が滞てしまったためである。
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Research Products
(1 results)