2017 Fiscal Year Research-status Report
K3 曲面に含まれる曲線上の半安定束に対するブリル・ネーター理論とその周辺
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16K05101
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
渡邉 健太 日本大学, 理工学部, 助教 (70582683)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | K3 曲面 / 曲線 / Mercat 予想 / 安定ベクトル束 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は大きく分けて二つある。
一つ目は偏極 K3 曲面上の階数 2 の安定 ACM 束の分類を行うことであった。まず、P^3 の 4 次超曲面の場合に超平面切断により決まる偏極に対する階数 2 の ACM 束の分類を試みた。これについては 4 次超曲面が射影的 normal な 次数 6 の種数 3 曲線を含む(すなわち、linear detarminatal の) 場合に着手したが、研究期間中に Gianfranco Casnati により目標としていた結果が得られたことがわかった為、一度研究を中断した。これに伴い、本研究では次年度に行う研究の準備段階として K3 曲面上に与えられた任意の偏極に対する ACM 直線束の分類についての研究を行った。具体的には偏極 H に比べて十分大きい自己交点数を持つ直線束 L が ACM となる為の必要十分条件を L の次数及び、自己交点数を用いて特徴づけた。これは P^3 の 4 次超曲面上の ACM 直線束の分類結果を真に含んでいる。
二つ目は曲線上の階数 2 の Mercat 予想 M_2 が成立するための十分条件である Lange と Newstead の評価式の精密化を行うのが目的であった。これについては以前の研究で M_2 が成立しない例を構成する為、曲線の 2 次クリフォード指数に寄与する半安定束のうち 4-section (大域切断の次元が 4 次元) を持つものに対応するシチジーを構成することを目標としていた。その為、本研究では曲線の上の 5 次元以上の線形系で、ある 2 次超曲面への埋め込みを与えるものを K3 曲面上で構成することを目的とした。特に Hirzebruch 曲面の 2 重被覆として得られる K3 曲面に乗っている曲線の Weierstrass 点における Weierstrass 半群の計算行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一つ目の課題である安定 ACM 束の分類については目標としていた研究が他の研究者により達成されてしまったが、それにより新たな知見が得られたことで、次なる研究課題への準備段階としての研究がある程度行えたこと。また、それにより今後の見通しが立ったことが大きい。また、二つ目の研究課題である曲線の高次クリフォード指数の研究については興味深い Weierstrass 半群を持つ Weierstrass 点が乗っている曲線の例を構成できたことで、当初の目標へのアプローチをする為の新しい対象の構成に期待がかかる。
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Strategy for Future Research Activity |
一つ目は前年度に引き続き、与えられたチャーン類を持つ階数 2 の安定 ACM 束の存在・分類についての研究を行う。昨年度は K3 曲面上の直線束が与えられた偏極に関して ACM となる為の必要十分条件を Hilbert 多項式を用いることにより幾つかのケースに分けて記述した。そこで本年度はまず、それぞれのケースに対応する具体例を構成することにより、ACM 直線束の分類を完成させる。また、上記の様に Gianfranco Casnati により Ulrich 直線束を含む P^3 の 4 次超曲面上の階数 2 のベクトル束が ACM 束となる為の必要十分条件が得られているが、そこでは ACM 束の切断の零点のなすlocus 及び、チャーン類を用いた記述が行われている。本研究では同様の方法により linear determinatal でない 4 次超曲面上の階数 2 の ACM 束について調べる。また、その結果として 4 次超曲面上の階数 2 の ACM 束の Hilbert 多項式を用いた特徴づけも行う。更に、その延長として前年度に行った研究に基づき、K3 曲面の高次元射影空間への埋め込みを与える偏極に関する ACM 束の分類へのアプローチも行っていく予定である。
二つ目は、前年度同様に高い階数の Brill-Noether 理論における Mercat 予想へのアプローチを行う為に曲線の 2 次クリフォード指数に寄与する階数 2 の安定束の構成に関する研究を行う。前年度の研究により Hirzebruch 曲面の二重被覆として得られる K3 曲面上の曲線において興味深い非対称 Weierstrass 半群を持つ Weierstrass 点が見つかったので、その整数倍で得られる線形系を用いて、当該研究計画において期待していた曲線上の安定束に対応するシチジーの構成を試みる。
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Causes of Carryover |
昨年度は研究計画通りに助成金を使用したが、研究計画初年度の未使用分が繰り越された為、その分が未だ使用できていない状況である。本年度も計画通りに使用する予定であるが、前年度に使用できなかった繰り越し分については論文の査読料や投稿料等の出版に関わる費用に加え、適宜必要に応じて物品を購入するなどして使用する予定である。
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Research Products
(4 results)