2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05109
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
伊藤 浩行 東京理科大学, 理工学部数学科, 教授 (60232469)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 代数多様体 / 特異点 / 正標数 / 導分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、正標数の体上定義される代数多様体と特異点に関して、代数幾何学、特異点論、表現論、数論、複素幾何学、応用代数学などにおける周辺分野を取り入れた複眼的視野からの研究により、次の3点を主目的としたものである。 A) 特異点論における正標数特有の病理的現象の統括的解明とそれらを含む一般理論の構築、B) K3曲面やCalabi-Yau多様体に関する諸問題の解決とそのモジュライ空間の構造解明、C) 他分野との連携を取り入れた正標数代数幾何学研究の試み。 このうちA)に関しては、野生的群スキーム作用による商特異点に関する研究と、基本的かつ重要な対象である有理二重特異点に関する研究を中心に行った。野生的群スキームとしては加法的群スキームの有限平坦部分群スキームによる商と、(擬)導分の関係性について詳細に研究を行い種々の結果を得た。特に、標数が2である場合は、野生的有限群スキームの作用を野生的群スキームの作用へ拡張し、族としての野生的商特異点が得られる十分条件について考察を行い定理を得ている。一方、有理二重点に関しては、正標数、特に野生的な場合も含めて、有限群スキーム商特異点である、という大きな予想を立て証明を試みている。多くの傍証が得られ、Artinによる分類表の中の多くの特異点に対してそれらが有限群スキーム商特異点であることを示した。 B)に関して、標数が2であるK3曲面は歴史的に、最初に単有理予想の解決やモジュライ空間の構造究明が進んだ。その理由の一つが準楕円ファイブレーションの存在である。平成28年度はこの考え方を利用すべく、準ファイブレーション構造を持つ代数曲面についてその性質を調べ、その曲面論的性質について興味ある結果を得た。同時に、正標数特有の興味深い特異点がいくつか得られた。 C)に関しては、群スキームの表現論の基礎として、(擬)導分に関する理論整備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの主目的毎に記述する。 A) 上述の通り、特徴的かつ基本的な野生的群スキームの商と付随する導分および擬導分に関して、理論構築が完了し、標数が2の場合には変形可能性の十分条件を得るに至った。しかしながら、長さが標数と一致する最も基本的な野生的群スキーム商と擬導分の理論構築のみであり、これは体の拡大では指数1のFrobeniusおよびArtin-Schreier拡大に対応しているもののみである。この体拡大の理論についてはJacobson-Galois理論としてこれまでも知られているが、この高指数版の理論については今だ研究成果が得られていない。 また、有理二重特異点に関しては、有限群スキーム商であると確定出来ていないものが、標数2の場合に残っており、特にD型については多くの未解明な部分が残っている。また、有理二重点の等特異軌跡についても概ね順調に決定出来ているが、残すところ標数が2のD型の一部となっている。 B) 準超楕円ファイブレーション構造を持つ代数曲面に関して、構造を確定し、特異ファイバーの分類を行い、曲面の不変量や性質を導出することにある程度は成功している。しかしながら、完全に一般的な場合は、場合分けが煩雑になり、まだ定理の形として得られていない。 C) 群スキームの作用と導分および擬導分の関連については、基本的な場合である長さが標数に等しい有限群スキームの場合については詳細に分かったため、その表現論的側面に関してもすこしずつ究明が出来ていると考えられる。しかしながら、より一般の長さの野生的有限群スキームについてはまだ手つかずの状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
A) 野生的群スキーム商に関して、指数が1より大きなFrobeniusおよびArtin-Schreier拡大に対応した体拡大理論に対応する理論の構築を行う。特に、導分および擬導分は高階導分および高階擬導分に対応することから、高階議導分に関する理論構築を行う必要がある。また、それを用いて、これまで殆ど非自明な例が知られていない高階(擬)導分による商特異点について、種々の興味深い例を多く与えることが必要と思われる。 有理二重点に関しては、大きな予想である、有理二重点は標数によらず群スキーム商特異点である、を証明する。そのためには、標数が2の場合の、特にD型の特異点に関してその詳細な構造究明を行う必要がある。 また、有理二重点の等特異軌跡に関しては、全ての検証を終了させ、奇数次元の場合と合わせて、任意標数、任意次元の単純特異点の等特異軌跡の解明を完了する。 B) 準超楕円ファイブレーション構造を持つ単有理曲面の数論と幾何について、準楕円曲面の場合に知られている程度以上の理論構築を行う。また、特にK3曲面となる場合にそのモジュライ空間の構造解明と、その高次元類似を考察することにより、Calabi-Yau多様体上定義された準ファイブレーションに関しても多くの例を与えることを試みる。 C) A)の進捗状況を見ながら、既にあるJacobson-Galois理論を一般化し、それを利用して、p Lie群論および野生的有限群スキームの表現論に関し、一般論を整備していく。
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Causes of Carryover |
年度末に購入予定の書籍の納品が年度を超えることとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初購入予定であった書籍を次年度購入。
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[Presentation] Wild group scheme quotient singularities2017
Author(s)
Hiroyuki Ito
Organizer
Workshop on Higher Dimensional Algebraic Geometry, Holomorphic Dynamics and Their Interactions
Place of Presentation
National University of Singapore, Singapore
Year and Date
2017-01-09
Int'l Joint Research / Invited
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