2019 Fiscal Year Research-status Report
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16K05116
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
諏訪 立雄 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (40109418)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 幾何学 / 複素解析幾何学 / 特性類の局所化 / 相対コホモロジー / 局所双対性 / 留数 / 佐藤超関数 / 特異多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, 相対 de Rham, 相対 Dolbeault, 相対 Bott-Chern 等のコホモロジーを用いて, 主として複素解析幾何学に現れる特性類の局所化を調べ, さらにそれぞれの場合に局所双対性によって得られる留数を明示的に求め, その応用を図ることである. 2019 年度はこの方法の発展として次の課題につき実績をあげた. 1. 関数の概念を自然に拡張するものとして佐藤超関数があり, これは特に微分方程式論に画期的な発展をもたらした. これは正則関数を係数とする局所コホモロジーを用いて定義され, 理論は導来函手の言葉で展開される. 実際に用いるには具体的に表す必要がある. 本研究代表者諏訪は数年前, 相対 Dolbeault コホモロジーを用いると超関数, その基本的演算および関連する局所双対性等が簡明に表されることを見出し, この立場からの超関数論の展開を共同研究者と共に開始している. 2019 年度は特に超関数のファイバー積分の理論を構築した. これは向き付け層の詳細な考察を含む. 2. 相対 de Rham コホモロジーにおける Thom 類, 相対 Dolbeault コホモロジーにおける解析的 Thom 類を用いて複素多様体の Hodge 構造の研究を行い, 特に blowing-up による Hodge 構造の挙動につき, イタリアの共同研究者と共に, いくつかの明示的結果を得た. 3. 特異多様体の交叉ホモロジーに対してもその相対版を考え, 上記のような局所化理論を展開する準備的考察をフランス, ドイツの共同研究者と共に始めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究代表者が推し進める特性類の局所化理論が発展し, さまざまな方面での応用が見出されている. 特に当初予期されなかったこととして, 佐藤超関数およびそれに関連した演算, 局所双対性等が相対 Dolbeaultコホモロジー論を用いると, 簡明かつ明示的に表せることが分かり, 超関数論の新たな展開を見ている. これにおいても, 以前より多方面で有効に用いられていた相対 de Rham コホモロジーでの Thom 類が重要な役割を果たす. またこの Thom 類と相対 Dolbeault コホモロジーでの解析的 Thom 類との比較は Hodge 構造の問題に新たな見地をもたらすことが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの研究を継続し, その発展としてつぎのような課題につき研究を行う. 1. 相対 Dolbeault コホモロジーによる超関数, マイクロ関数の表示を用いてこれら関数の理解をさらに深め, 解析学, 複素解析幾何学等への応用を求める. 2. 相対 de Rham, 相対 Dolbeaultコホモロジーを用いた Hodge 構造の研究を継続する. また相対 Dolbeaultコホモロジーにおける局所双対性につきさらに探求し, 例えば複素解析的 Lefschetz 不動点定理の簡明な証明を与え, またこれをさらに拡張することを試みる. 3. 相対 Bott-Chern のコホモロジー論においても, ベクトル束の Bott-Chern 類の切断による局所化理論を展開する. 特に Thom 類を定め, Hodge 構造の問題, 埋込に対する Riemann-Roch 定理等への応用を図る. 4. 特異多様体の交叉ホモロジーに対してもその相対版を考えて局所化理論を展開し, Brasselet-Legrand の微分形式による表現も用いて局所不変量を明示的に求める.
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Causes of Carryover |
(理由) 研究代表者は, 令和2年6月末-7月初, イタリア・トレントでの研究集会に主講演者として招待された. 代表者はまたパルマ大学・A. Tomassini, フィレンツェ大学・D. Angella 等と当該研究課題の応用に関する共同研究も行っており, これら大学の訪問も要請されている. この集会での研究発表, これら大学での研究打合せによる共同研究の継続により当該研究をさらに発展, 完遂させるため当初計画を効率的に進め経費を確保した. (使用計画) 当該研究課題に関わる研究発表および研究協力者との研究打合せ旅費として用いる予定である.
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