2017 Fiscal Year Research-status Report
非可換な群作用をもつラグランジュ部分多様体のFloerコホモロジー
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16K05120
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
入江 博 茨城大学, 理学部, 准教授 (30385489)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トポロジー / Floerホモロジー / 旗多様体 / 対蹠集合 / ラグランジュ部分多様体 / 幾何学 / Mahler予想 / 凸体 |
Outline of Annual Research Achievements |
シンプレクティック多様体の不変量について、複素旗多様体のラグランジュ部分多様体のFloerホモロジー、および昨年度の進展を踏まえた凸領域のHofer-Zehnder容量について重点的に研究を行った。研究計画の2年目である平成29年度は、主に以下の2つの成果があった。 1.複素旗多様体のラグランジュ部分多様体の典型例としてその実形がある。一つの複素旗多様体に位相型が異なる実形が存在する場合がある。昨年度、複素旗多様体の二つの実形の交叉の構造を利用して、二つの実形の位相型が異なる場合にも対のZ_2係数Floerホモロジーを、標準的複素構造のregularityを仮定した上で計算した。このregularity(正則なstripの方程式の線型化写像の全射性)を対称三対の理論を用いて既知の方法に帰着させることにより証明した。これにより、昨年度の計算が正当化でき、ハミルトンイソトピーによる変形の下での交点数の最良評価が得られた。これは、井川治氏(京都工芸繊維大学)、奥田隆幸氏(広島大学)、酒井高司氏(首都大学東京)、田崎博之氏(筑波大学)との共同研究であり、現在論文を準備中である。 2.ユークリッド空間の中心対称な凸体のvolume productの下からの最適評価はMahler予想と呼ばれ、凸体の幾何学の分野の古典的未解決問題である。このMahler予想について、3次元の場合を解決し等号成立条件も決定した。この研究は、柴田将敬氏(東京工業大学)との共同研究であり、プレプリントをarXiv:1706.01749に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画であった「複素旗多様体の合同とは限らない実形の対のFloerコホモロジーの決定」が平成29年度をもって完成した。当初計画よりも1年の遅れとなったが、想定された最も良い形での解決となった。 さらに重要なことは、昨年度、凸シンプレクティック領域のHofer-Zehnder容量に関する海外の研究に触発され、凸体の幾何学の分野の古典的未解決問題の一つであるMahler予想に着手できたことである。この予想の3次元の場合について、昨年度仮定していた条件を外して一般の場合に証明するとともに、等号成立条件も決定することができた。以上の内容は、当初の研究計画では全く想定できなかった大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
シンプレクティック多様体の不変量について、当初はラグランジュ部分多様体のFloerコホモロジーを主眼に研究課題の立案を行っていた。しかし、昨年度からのMahler予想に関する進展の重要性に鑑み、当初29年度および30年度の研究実施計画であった「複素射影空間の中の第2基本形式が平行なラグランジュ部分多様体のFloerコホモロジー」を一旦保留し、凸シンプレクティック領域のHofer-Zehnder容量の研究を中心に推進する。 項目1については、実質的な研究は完成しており、論文の作成を急ぐ。その際、他4名の共同研究者と随時研究連絡を行うことにより作業の効率化をはかる。 また、項目2については、Mahler予想が3次元の場合に解決できたので、その証明方法の高次元の場合への適用を行う。次元が上がるほど適用が困難になることはすでに観察できており、完全な解決には至らないことが予測されるが、ある程度条件をつけて結果が得られないかを検討する。合わせてMahler予想へのシンプレクティック幾何からのアプローチについて検討する。
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Research Products
(4 results)