2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05134
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
庄田 敏宏 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (10432957)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 三重周期的極小曲面 / 変形族の構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
三重周期極小曲面は界面活性剤の膜を構成することが物理・化学などで知られており,さらにその膜の温度を変化させるとラメラ構造という平面が周期的に並ぶ膜が現れることも知られている.本研究はこうした自然現象を数学的に記述することを趣旨とするものである. 本年度は特に,三重周期極小曲面の変形族を構成し,それを定めるRiemann面を退化させたときの状況を具体的に調べるという方針をとった.三重周期極小曲面を退化させたときにどのような現象が起こるかを,具体例を通して状況を把握し,一般論を構築する方針である.ただし,ただの変形族ではなく,退化までの状況が保証されるような変形族の構成には難解な弊害がある.今回,江尻典雄氏(名城大学)と藤森祥一(岡山大学)との共同研究によって,三重周期極小曲面の2助変数変形族で,退化までの状況を保証するようなものを構成することができた. 構成のアウトラインは次の通りである.まず,4助変数によるRiemann面を設定し,その標準的ホモロジー基底を決定する.次に,そのRiemann面から自然に定まるAbel-Jacobi写像の実部を考え,その周期行列が実3次元Euclid空間内の格子を定めるための必要十分条件を特定する.そして,その必要十分条件を満たすような助変数を4つの助変数の中から抽出する.結果的には4つの助変数から2つの助変数を抽出することになり,これによって2助変数による変形族を得た.その抽出の過程で複雑な状況の下で陰関数定理を多用し,退化までを保証する助変数の抽出に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のプロセスにおいて,Riemann面の標準的ホモロジー基底を決定するための技術は習得していたのであるが,その後,周期行列から如何に格子を定める助変数を抽出するかに難解な問題を抱えていた.今回,陰関数定理を利用する手法を発見し,望ましい変形族の構成に成功したことから,当初の計画を十分に実現できていると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
今回構成した変形族を退化させた状況を考慮し,一般論の確立を試みたい.そのためには,三重周期極小曲面における退化という概念を数学的に定式化し,種数が低い場合の退化状態の分類を考察することを今後の第一歩としたい.
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Research Products
(3 results)