2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05134
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
庄田 敏宏 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (10432957)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 三重周期極小曲面の極限 / ラメラ構造 / 極小曲面の変形族の構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ソフトマターでは界面活性剤の膜と三重周期極小曲面の関係が知られており,温度を変化させると,三重周期の形状だった膜が平面が一方向に周期的に立ち並ぶラメラ構造というものに変異する.この現象の数学的記述を試みることを趣旨として,三重周期極小曲面の極限の研究を課題とした.平成30年度の成果は大きく,さらに,関係論文2本が国際誌に掲載されるという形にもなった.なお,この二つの研究は名城大学理工学部数学科の江尻典雄教授と岡山大学理学部数学科の藤森祥一教授との共同研究に基づくものである. 具体的に結果を述べると,一つは種数3の三重周期極小曲面において,大部分の極限は従来知られてきた二重周期極小曲面(Rodriguezが2007年に構成した標準例と呼ばれているものに該当する)や一重周期極小曲面(Karcherが1989年に構成したサドルタワーに該当する)に収束するということを示したものである.Rodriguezの標準例は無数の平行に並んだ平面たちがCatenoidのような柱でつながっている形状である.よって,今回の研究結果は平面が立ち並ぶ現象を捉えている側面があり,ラメラ構造の出現の数学的記述の一つである可能性がある.もう一つは三重周期極小曲面の2助変数変形族の具体例を構成したものである.複雑な形の数式に陰関数定理を適用するという解析学的手法によって,理論的に構成することができた.さらに,その極限の状況も考察しており,今後,一般論を構築する上でのサンプルを得たと考えられる. また,奇しくも三重周期極小曲面の安定性に関係する極小曲面のMorse指数の理論が,閉曲面上のLaplacianの第一固有値に関する等周問題と関連することが明確化された.これに伴い,名古屋大学の納谷信氏との共同研究によって,2005年に提唱された等周問題に関する予想を解決することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
自然現象は何らかの安定性を基にしているという見方が自然科学の見解であるが,種数3の三重周期極小曲面はその安定性を満たすものの候補であることがRosの2006年の結果から示唆される.したがって,ラメラ構造を始めとしたソフトマターでの現象を考察する上では種数が3の状況を解明することが重要となる. 上述の通り,種数3の三重周期極小曲面において,その極限の大部分の状況を特定することに成功した.それに関連する論文がインパクトファクターの高い国際誌に掲載されたため,結果自体の信頼度も得ることができた.また,Laplacianの第一固有値に関する予想を解決し,その内容が歴史ある国際誌に掲載されるに至った. このような事情から,当初の計画よりも大きく進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針であるが,大部分の極限を特定することができはしたが,すべての極限を特定したわけではない.したがって,種数3の三重周期極小曲面において,大部分でない極限の構造を解明することがあげられる.また,大部分の収束先が従来から知られていた一重周期極小曲面や二重周期極小曲面になることまでは示せたが,勝手に指定した一重周期極小曲面などに収束するような三重周期極小曲面の存在は未だ判っていない.そのようなことから,しかるべき三重周期極小曲面の変形族の構成にも着手したい.さらに,閉曲面上のLaplacianの固有値に関する等周問題にも着手したい.今回は種数2の場合を解決したのであるが,高い種数の場合にも着手したい.
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Research Products
(5 results)