2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05146
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上 正明 京都大学, 理学研究科, 教授 (80134443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 毅 京都大学, 理学研究科, 教授 (20273427)
藤井 道彦 琉球大学, 理学部, 教授 (60254231)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 4次元多様体 / 3次元多様体 / Seiberg-Witten理論 / Heegaard Floerホモロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の上はSeiberg-Witten理論やHeegaard Floerホモロジー理論に由来する3次元多様体の不変量の研究を継続した.以前ザイフェルト有理3球面と呼ばれる3次元多様体のクラスについて,組み合わせ的に定義されるmu-bar不変量がある条件のもとで解析的なエータ不変量により表されること,それを経由してHeegaard Floerホモロジー理論に由来する補正項不変量との関連付けを与えた.一方でManolescuが定義したベータ不変量は一般の整ホモロジー3球面に対してホモロジーコボルディズム不変という性質を持ち,ザイフェルトホモロジー3球面を含むある種のグラフ多様体においてはmu-bar不変量に一致することをStoffregenやDaiが示した.しかし一般のグラフ多様体では両者は一致しない例が示されている.後者の不変量はSeiberg-Witten Floerホモロジーに由来するSWF空間から導かれ,その同変ホモロジーはHeegaard Floerホモロジーと等価であることが知られている.この方向からのManolescu達の結果も研究代表者の手法もSeiberg-Witten方程式の有限次元近似に基づくが,両者の関係はまだ明らかでなく,その解明に向けて研究を継続している. また以前から研究代表者の結果も含む形で進めていた4次元多様体に関する包括的な教科書の執筆がほぼ完了した.その内容は4次元トポロジーの古典論からゲージ理論,Seiberg-Witten理論,Heegaard Floerホモロジー理論やその等価性,およびそれらの応用を広く包括するものになっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
有理ホモロジー3球面の組み合わせ的不変量とSeiberg-Witten理論やHeegaard Floerホモロジー理論に由来する不変量の関連に関する研究は,ManolescuによるSWF空間に由来する不変量やF.LinによるMorse Bott型Seiberg-Witten Floerホモロジーを用いた再定式化の登場で新たな曲面を迎え,それらを理解した上で研究代表者の手法との関連を探るためになお時間を要している.また2018年度中に完成予定であった4次元トポロジーの教科書の執筆は,最新の研究成果を取り込んだ為に当初の予定より大部となった.ほぼ完成しているが若干推敲の余地が残っているため,最終的な完成は2019年に持ち越すことになった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の上はSeiberg-Witten理論やHeegaard Floer理論由来の3次元多様体の不変量の研究を継続する.特にSeiberg-Witten Floerホモロジーやその精密化であるFloerホモトピー型に由来するSWF空間のホモロジーとHeegaard Floerホモロジーの等価性が明らかにされており,それらに由来する不変量と研究代表者の考えてきた手法との関連をより追求する.特に具体的応用については,組み合わせ的に得られているHeegaard Floerホモロジーのデータを前述の等価性によりSeiberg-Witten理論由来の不変量の研究に持ち込むことが原理的には可能になっており,境界をもつ4次元多様体のトポロジー,特にその交叉形式に対する具体的な応用を目指す.一方4次元トポロジーの教科書については,当初の予定以上の大部になったが細部の推敲を残すのみになっており,最終的に出版に至る道筋をつけたところである.
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Causes of Carryover |
研究代表者の研究対象に関わる内外の新たな研究の進展を踏まえ,それらを理解した上で研究代表者の手法との関連を探るのに時間を要した.また4次元トポロジーの教科書の執筆はそれら内外の研究の進展の成果を反映させるために予定より大部のものとなり,完成が遅れた.ただし現在は推敲を残すのみの状況であるため,内容の整備のための他の研究者との意見交換や新たな知見の吸収,出版に向けての研究環境の整備を行いたい.また研究代表者の研究手法と新たな研究の動向との関連をさぐるため,研究集会への参加を通して他の研究者との意見交換や新たな知見の吸収,研究結果の発表に努めるために助成金を使用したい.
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