2019 Fiscal Year Research-status Report
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16K05166
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
渡辺 文彦 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 総合教育学群, 教授 (20274433)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | テータ函数 / 超楕円曲線 / 接続公式 / アーベル・ヤコビ写像 |
Outline of Annual Research Achievements |
修士の研究科学生との共同研究により,種数2のリーマン面上においてWirtinger積分(超幾何積分)に類似の積分を定義した.構成法は,Wirtinger積分では被積分函数の分岐点が楕円曲線のWeierstrass点4点であることに着目し,種数2のリーマン面のWeierstrass点6点で分岐する被積分函数を2変数テータ函数とAbel-Jacobi写像の合成を用いて構成し,この被積分函数を分岐点を結んで広義積分するというものである.これを種数2の超幾何型積分と呼ぶ. この研究における主定理は, 5個のこのような超幾何型積分の間の1次関係式が存在するというものである. 被積分函数に付随するツイストコホモロジーの次元は8であることが知られ,超楕円対合の作用で解空間の次元が半分の4に落ちることから,この定理の内容はつじつまが合う. 種数$2$の超幾何型積分は, $6$点分岐のJordan-Pochhammer積分を, それのもつ$3$変数の独立変数の空間から$2$次のSiegel上半空間へ持ち上げたものになっている. Jordan-Pochhammer積分に対する接続公式は, 超幾何型積分に対するSiegelモジュラー変換公式に対応するが, 主定理はSiegelモジュラー変換公式の片鱗を与えていると理解することができ, 従来の超幾何函数論の証明法とは異なるという意味で意義のある結果と思われる.また,被積分函数には15個の2変数テータ函数が現れるが,これはK3曲面の一例であるKummer曲面の因子の配置と深い関係があり,Kummer曲面の超幾何函数の種数2のリーマン面への引き戻しと関係があると思われる.以上の研究結果は,水谷・渡辺「種数2のRiemann面上の積分表示に関する1次関係式について」防衛大学校理工学研究報告58巻(2020年9月)に掲載決定(頁範囲未定).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
水谷・渡辺「種数2のRiemann面上の積分表示に関する1次関係式について」防衛大学校理工学研究報告58巻(2020年9月)により,種数2のリーマン面上の超幾何型積分を定義し,接続公式のうちのひとつを得ることができた.これにより,本研究課題における大きなテーマの一つである,種数2のリーマン面上の解析の足がかりが得られた.この研究結果に関連し,一般ジーゲルモジュラー変換の問題,積分のみたす偏微分方程式が残されている.またKummer曲面の因子の配置に関する研究については,局所定数層が曲面上にどのように載るかの検討を行なったが,これはコホモロジーの研究の準備段階である. 平成30年度までの2次元トーラスのツイストホモロジーの研究に予想外の時間をとられたため,最初に述べた研究は本来は平成30年度に終えておきたかった内容を平成31年度(令和元年度)に実施したものである.全体の研究の進行状況が1年ほど遅延している関係で「遅れている」の判定とした.
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Strategy for Future Research Activity |
種数2の超幾何型積分の被積分函数の中には,半周期に付随する16個のテータ函数のうち15個が現れる(のこり1個は積分表示の土俵である種数2のリーマン面の定義方程式).これはKummer曲面の因子配置と深い関係がある.令和2年度はKummer曲面の因子に付随する適切な局所定数層係数のコホモロジーの研究である.16個のテータ函数の冪積の積分を,2次元トーラスからKummer曲面を構成する手続き(16点ブローアップと対合による商)によってKummer曲面上に載せる.2次元アーベル多様体のコホモロジーに関する拙著Internat. J. Math. (2016)の技術を応用しコホモロジーに関する知見を導く予定.種数2の超幾何型積分について,モジュラー変換や偏微分方程式については共同研究者の水谷康宏の助けを借りつつ実施する.最終年度に当たるため,本研究課題の期間に得られた結果について,査読を行う学術雑誌等に投稿できるよう英語による論文を準備する予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で,平成31年度(令和元年度)後期に予定していた,研究成果のレビューを受けるために徳島大学(大山教授)に渡辺と共同研究者の水谷が旅行するための旅費の支出,および日本数学会(日本大学,千代田区)の研究報告のために渡辺と水谷が旅行するための旅費の支出が中止になったため,次年度使用額が388,708円となった.令和2年度は次年度使用額を含め約109万円ほどの直接経費の使用可能額が発生する.例年図書の購入額が20万円ほどであり,残りはおもに,水谷康宏との研究打ち合わせ,延期しているレビューや学会発表のための旅費である.新型コロナにより,学会のオンライン化による研究報告旅行の省略や,その他の研究旅行の慎重な実施により,予定する旅行を思うように実施できない可能性があり,令和3年3月までに使用可能額が使い切れない場合は,やむを得ず半年から1年ほど研究期間を延長することの検討もせざるを得ないと考えている.
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Remarks |
防衛大学校内からのみ閲覧できるサイト
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Research Products
(1 results)