2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K05168
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
伊藤 隆 群馬大学, 教育学部, 教授 (40193495)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 数域半径 / 作用素環 / 作用素空間 / ヒルベルト空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
連続関数環からその双対空間への有界線形作用素の分解問題は、古典的なグロタンディークの不等式を用いて、ヒルベルト空間を経由する形で得られる。これを非可換な作用素環上で考察するとハーゲラップによる非可換グロタンディーク不等式が、強力な道具となり、やはりヒルベルト空間を経由した分解が可能になる。これらはいずれも1つのヒルベルト空間を経由する分解であるが、ノルムの代わりに数域半径を用いると、2つのヒルベルト空間を経由した分解を得る。 ポールセンによって得られた『拡張した数域半径を用いた作用素分解問題』は、有限型因子の埋め込み問題と同値であることが示されたが、上記の分解に現れる作用素が、与えられた作用素環の中の作用素として実現できるかが、鍵となることを突き止めた。 非可換グロタンディーク定数を以前ハーゲラップとの共著論文で決定したが、これは数域半径とノルムの差に現れる定数と一致している。伊藤‐渚の導入した数域半径作用素空間とルアンの作用素空間の差異にも表れる定数である。作用素のノルムのままではコントロールすると、ヒルベルト空間は、1つしか現れず、数域半径に落とすと2つ出てくるが、その作用素は、あくまでB(H)の中でしか見つけられていない。ラドンニコディム微分に現れる作用素が、同じ役割を得る予想をたてているが、スタインスプリング型の表現に現れる作用素と同様、非可換グロタンディーク定数が、障害となっている。予想に現れる作用素をさらに取り直す方法を模索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分解に現れる作用素をグロタンディーク定数を無視すれば、古典的なバナッハ空間の設定で解決している。ノルムの評価に関し困難が生じているが、数域半径ではコントロール出来た。作用素の作用素ノルムと数域半径ノルムの間にあらわれるラドンニコディム微分が鍵となることを突き止めている。
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Strategy for Future Research Activity |
有界線形作用素のヒルベルト空間を経由する分解を、作用素空間的ヒルベルト空間を経由する完全有界作用素の分解としてとらえ直すことが、不完全である。そこで、作用素空間的ヒルベルト空間を列ヒルベルト空間もしくは行ヒルベルト空間に換え、さらに補間理論を用いてアプローチを試みる。
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Causes of Carryover |
当初、平成 29 年度計画では、作用素環の国内研究集会に出席予定であったが、都合で参加できなかった。次年度使用額と今年度の助成金と合わせて、作用素環の研究集会のみならず、関連する作用素の研究会にも参加する計画をしている。
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