2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K05173
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
伊藤 秀一 金沢大学, 数物科学系, 教授 (90159905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴山 允瑠 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (40467444)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 可積分系 / 標準形理論 / 剛性 / 非可換 |
Outline of Annual Research Achievements |
解析的ベクトル場の標準形理論の枠組の中で,(超)可積分性と解析的標準化の関係について研究を行った。とくに,ベクトル場Xが楕円型平衡点の近傍で,その共鳴度に応じた個数の第一積分と可換なベクトル場をもつ場合を調べた。この場合,もし形式的に求積可能なポアンカレ-デュラック標準形へ変換できるならば,じつは解析的標準化が可能であることが以前から示されていた。本研究では,与えられたベクトル場Xがいかなる条件を満たせば,そのような形式的標準化が可能であるかを調べ,部分的成果を得た。これは,可換なベクトル場を等価に扱うのではなく,一つのベクトル場Xに注目し,それがいかなる「良い」条件をもてば,Xの第一積分とXと可換な(すべてが互いに可換でなくてもよい)ベクトル場の存在だけから解析的標準化が可能となるかを追求したものである。この研究は可積分系の剛性を理解するための一つのアプローチであり,可積分性をいわば非可換な立場から追求するものである。このほか,楕円型とは限らない一般の平衡点の近傍で定義されたベクトル場の解析的標準化問題について,共鳴度の定義等の準備段階の研究を行った。 また,一般の写像の可積分性をどのように定義すべきかを,写像の不動点のまわりの標準化問題を通じて調べた。とくに,可換なシンプレクティック写像の同時バーコフ標準化の収束証明の再検討から始めて,先行研究についての検討,および低次元の写像の場合に制限した計算と考察を行った。それらを今後の研究に発展させていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,写像の標準化の研究を推進する予定であったが,ベクトル場の場合について,以前の研究を発展させた問題に解決のヒントを得て,そちらに力を注ぐ結果となった。写像の可積分性についての研究はやや遅れているが,ベクトル場については新たな進展の糸口があったので,おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずベクトル場の解析的標準化について「非可換可積分性」の観点を鮮明にした研究を推進し,摂動問題の観点からも興味深い成果につなげたい。また,写像の可積分性についても,この研究と有機的なつながりをもって進めていきたい。
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Causes of Carryover |
本研究の代表者は平成28年度を最終年度とする別の科研費の補助も受けており,本研究はその科研費研究課題を発展させたものとなっている。このもう一つの科研費の補助により海外の研究協力者を招聘した上で,国際研究集会を本科研費も合わせた補助により開催する予定であったが,海外研究協力者の滞在日程が予定より短くなったため,本科研費から研究集会の際の国内研究協力者の旅費の支出を行う必要がなくなった。また,研究代表者の国内出張回数が当初の予定よりも少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は2度の海外出張を予定しており,また国内旅費も多く必要となる見込みであり,それらの経費として使用する予定である。
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