2018 Fiscal Year Research-status Report
複素力学系のGoldberg-Milnor予想と退化Beltrami方程式
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16K05193
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川平 友規 東京工業大学, 理学院, 准教授 (50377975)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 複素力学系 / Beltrami方程式 / Julia集合 / 放物的分岐 |
Outline of Annual Research Achievements |
・Goldberg-Milnor予想へのアプローチとして,退化Beltrami方程式の同相解に収束すると期待される擬等角写像の列に対する考察をおこなった.特に,幾何学的有限と呼ばれるクラスに属する多項式に関しては一定の成果が得られた.その他のクラスについても,いくつか技術的な課題は残っているが解の存在を示唆する結果が得られた. ・Zalcmanの補題を複素力学系に適用して得られる有理型関数の族(Zalcman関数族)の研究を行った.とくに,Riemann面によってパラメーター付けされる有理関数族の分岐集合に対してZalcman関数族を定義し,その基本的性質を明らかにした. ・Yi-Chiuan Chen氏との以前の共同研究でCantor型の2次多項式力学系が退化して半双曲的とよばれるクラスの2次多項式力学系が生成される現象について,正則運動の退化という形で定式化し,その速度評価を与えたが,それに関連して,Julia集合のHausdorff次元の評価について研究した. ・上記の速度評価に関連し,いくつか特殊な場合において非常に簡単な証明を与え,論文にまとめた. ・2019年3月に東京工業大学にて「Beltrami方程式勉強会 Part II」を主催し,Beltrami方程式とその関連分野(Klein群論,幾何学的函数論,Teichmuller理論など)について,国内から専門家を招聘して講演していただいた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
力学系が比較的「よい」性質を持つ場合に限って結果(求めたいBeltrami方程式の解)が得られたが,既存の結果を改良するためにはより広いクラスの力学系について同様の結果を得る必要がある.それには,退化Beltrami方程式に関して技術的にクリアしないといけない問題がいくつか残ってしまった.
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Strategy for Future Research Activity |
Goldberg-Milnor予想に対し新しいアプローチで挑んでいるが,現状では既存の結果を越える結果が得られていない.退化Beltrami方程式の解がもつべき幾何学的性質と力学系のカオス部分がもつ幾何学的性質と突き合わせて考察を深めるべきだが,退化Beltrami方程式の解(μ等角写像)の一般論では十分とは言えないため,この問題に特化したアドホックな議論に傾倒していく必要が感じられる.
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Causes of Carryover |
やむを得ない事情があり,海外出張を2回キャンセルせざるを得なくなった.また,いくつかの国内出張も期間を短縮せざるを得なかった.次年度は自分自身の研究発表のために海外出張旅費として利用するほか,共同研究者や研究協力者の招聘旅費として利用する.
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Research Products
(10 results)