2017 Fiscal Year Research-status Report
値分布論をモデルとした複素函数論の超離散的関数論への変換と諸分野への応用
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16K05194
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤解 和也 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (30260558)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トロピカル・ネバンリンナ理論 / 超離散方程式 / 複素差分方程式 / 離散方程式 / 複素線形微分方程式 / Mason's theorem / 値分布論 / ネバンリンナ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
University of Eastern Finlandの研究グループ(Ilpo Laine名誉教授、Risto Korhonen教授、Janne Heittokangas准教授、Yueyang Zhang氏)との共同研究により複素差分及び微分方程式と超離散Nevanlinna理論に関して新たな研究成果を得た他、University of New OrleansのGary G. Gundersen教授とTU DortmundのNorbert Steinmetz名誉教授との共同研究により平面上の有理型函数に関する5対の複素数共有に関する未解決問題を肯定的に解決した。前者では連携研究者の石崎克也放送大学教授と中国の Taiyuan University of TechnologyのZhi-Tao Wen准教授、University of JinanのNan Li講師、Tsinghua UniversityのJianhua Zheng教授とが参加して、指数函数の多項式の零点に関する研究、差分版のradicalを用いたMason's theoremの改良に関する研究、有理型函数の差分商に関する評価の精密化と離散方程式への応用についてそれぞれ良質な成果を上げた。これらは特徴的な方程式の解として与えられる函数の値分布論な特徴をより詳細に調べた研究とそれらを仲介として複素解析的手法の差分化あるいは離散化を行うことで導かれた研究成果と表現することができ、本研究課題の目的に沿って発展している。これらの成果は数論的な観点からも興味深いものではないかと期待している。これらの研究を通じてFujian Normal UniversityのWei-Chuan Lin教授、HKUSTのYik-Man Chiang准教授との共同研究へと繋がっており、これらが課題達成に向けてさらに本研究を進展させている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の内容自体については当初計画した水準を超えており、独立した内容の5編の論文にまとめて投稿中であるが、いずれも査読に想定以上の時間を要しており発表には至ってはいないことから現時点での進捗状況の区分は1段階低くした。いずれの投稿先も高く評価されている学術誌であり、従って競争も激しく採択までに予想以上の期間が費やされていることは致し方ないと考えている。但し、いずれの研究成果についても当初計画で設定した水準を十二分に満たしており、時間は要しても必ず相応の評価が得られると確信している。いずれも国際共同研究であり、さらに開始当初には想定していなかった研究者と新たな連携が構築されるなど、良い意味で予測が覆された一年間でもあった。最終年度となる次年度に於いてもこれらの共同研究がさらに発展するとの確かな見込みもある。一方で、これらの研究の発展・深化に伴って基本的に単身で海外の共同研究者個々と絶えまなく情報交流することに時間と労力が必要となるため、「超離散的関数論への変換」という形で総括に向かう時期が少し遅れるのではないかとの危惧はある。とは言え、そのことに過度に拘泥するあまり、安易な形で本研究を収束させてしまうことは厳に慎み、時間の許す範囲で最大の発展を目指したいと考える。これを続けることで、本課題のもうひとつの目的である「諸分野への応用」の形が明瞭になって、実質的な成果に結びつくと信じている。以上から「おおむね順調」であるとの自己点検となりました。
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Strategy for Future Research Activity |
最終的には複素力学系に関する結果を超離散化することを目指す。しかしながらそのために不可欠なのが適切な「双曲的な」シフト作用素を導入であり、それを巧みに複素微分作用素の代替として類似の評価を導くことである。現在、その有力な候補を見つけ評価の試みを行っているところであるが、現時点はそれらの評価手法や議論の流れは人工的であまり美しくはない。特に積分を用いて得られる評価については、より深い洞察が求められていることは間違いない。双曲幾何に関する基本的結果も含めて、再検討の必要があると思われるが時間的な制約は否めず、この分野で精力的に研究している研究者をアメリカから招聘する計画であったが、それぞれの所属機関での業務や設備に関する状況の変更があり次年度中の実現は断念せざるを得なくなった。そのため、これら幾何学的な側面に関する考察から数論的な側面へと重心を移し、現在までの研究成果の応用可能性について詳しく検討していく。そのため現在あるいは過去に共同研究を行った海外の研究者を本申請者が仲介しつつ連携を構築して対応して行きたい。何れの研究者とも定期的な連絡を維持しており、古くても過去数年間に一度は面談の機会を得、テーマに合意できれば共同で研究する意志を確認しているため、これらの実現に不安はない。
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Research Products
(8 results)