2016 Fiscal Year Research-status Report
マルティンゲール空間およびマルティンゲール不等式の実解析的側面の研究
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16K05203
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
貞末 岳 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (40324884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 英一 茨城大学, 理学部, 教授 (60259900)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マルティンゲール / 一般化分数べき作用素 / Morrey 空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、実解析学においては関数空間の理論が急速に進展している。そこで本研究ではこれらの理論をマルティンゲール空間へ拡張し、マルティンゲール理論を進展させることを目指している。この主題に沿ってこれまでに次のような結果を得ている。 1.atomic なフィルトレーションをもつマルティンゲールに対する一般化分数べき作用素の定義を改良し、マルティンゲール Morrey 空間で有界となる条件を最良に近いものにすることができた。実際いくつかの弱い付帯条件のもとでは、この条件が必要十分条件を与えることも示せている。そしてこの条件がユークリッド空間での一般化分数べき作用素の有界性の条件を抽象化したものになっていることも確認できている。 2.atomic なフィルトレーションをもつマルティンゲールに対しては、シャープ最大関数と最大関数との同値性をマルティンゲール Morrey 空間へ拡張することができた。これはユークリッド空間での Komori-Furuya の手法を拡張したものになっている。 3.atomic なフィルトレーションをもつマルティンゲールに対して、その分数べき作用素と乗法作用素との交換子のマルティンゲール Morrey 空間での有界性を調べ、それにより BMO マルティンゲールや Lipschitz マルティンゲールの新しい特徴づけが得られた。これは Chao-Ombe が dyadic マルティンゲールに対して示したことを atomic なフィルトレーションをもつマルティンゲールすべてに対して示したことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では平成30年度に予定していた一般化分数べき作用素のマルティンゲール Morrey 空間での有界性に関する必要十分条件の研究を平成28年度に前倒しして行い、atomic なフィルトレーションに関しては完了した。そしてその成果を論文にまとめ、雑誌 Mathematical inequalities and applications に投稿している。そしてこの成果を 2016 年 10 月に北京で行われた研究集会「Harmonic Analysis and its Applications in Beijing 2016」と 2017 年 3 月の日本数学会の2回に分けて発表を行った。 そしてこの分数べき作用素の研究が予想を超えて進展し、当初計画にはなかったシャープ最大関数と最大関数との有界性や、分数べき作用素と乗法作用素との交換子のマルティンゲール Morrey 空間での有界性による BMO マルティンゲールや Lipschitz マルティンゲールの新しい特徴づけが得られた。このことはさらに拡張できることが分かったため論文は未完成であるが、一部分については研究集会「関数空間の構造とその周辺」で発表した。 ただ、分数べき作用素の研究が進展したことで、当初計画では本年度に予定していたマルティンゲール Morrey-Hardy 空間の複素補間、Herz 型不等式、Fefferman-Garsia 不等式、Osekowski の最良不等式の拡張については、予備的な計算は進展したが、発表には至らなかった。 以上をまとめると、本年度に予定していた研究は発表には至らなかったものの次年度に向けた進展ができ、また平成30年度に予定していた研究の1つが達成され、さらに当初計画を大きく超えて進展している。以上からおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
代表者の貞末は、引き続き分担者の中井の助力を得て研究を進める。そのため勤務先の大学を相互に訪問するなど連絡を緊密にする。 平成28年度において、平成30年度に予定していた一般化分数べき作用素のマルティンゲール Morrey 空間での有界性に関する必要十分条件の研究を atomic なフィルトレーションの場合に進展させたため、当初予定していたマルティンゲール Morrey-Hardy 空間の複素補間を平成29年度に行う。また、当初計画になかったシャープ最大関数と最大関数との Morrey 空間での同値性や、分数べき作用素と乗法作用素との交換子のマルティンゲール Morrey 空間での有界性による BMO マルティンゲールや Lipschitz マルティンゲールの新しい特徴づけを atomic なフィルトレーションの場合について平成29年度で完成させる。そのため平成28-29年度に予定していた Osekowski の最良不等式の拡張は、平成29-30年度に繰り下げる。 バナッハ関数空間でのマルティンゲール不等式の研究についても平成29-30年度に繰り下げるが、平成28年度での予備的な計算において、Davis 分解の同値条件の発見が困難であった。この達成が難しいと判明した場合、別の有効な研究課題を行うことを考えている。今のところ有力な候補として、現在進行中の atomic なフィルトレーションの場合の分数べき作用素と乗法作用素との交換子のマルティンゲール Morrey 空間での性質を、一般のフィルトレーションへ拡張することを考えている。
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Causes of Carryover |
2016年10月に北京での研究集会で研究発表を行ったが、招待講演であったため滞在費が不要となり、旅費支出が当初計画より少額となった。また、当初計画を超えて進展した研究があり、その発表は年度をまたぐこととなったため、これも旅費支出が当初計画より少額となった理由である。また、国内での研究集会を主催したが、その際当初予定していた人件費が不要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度では新型のパーソナルコンピュータを購入する予定であったが、当初計画より高性能のものを購入し研究のスピードを加速する予定である。また、平成29年度に、当初計画になかった中国のマルティンゲール研究者との交流を行うことが決定している。このため共同研究を行う際の旅費が、当初計画に加えて必要となる見込みである。そのほかについては、当初計画通りの使用を予定している。
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