2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K05206
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
柳原 宏 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30200538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀田 一敬 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (10725237)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レブナー理論 / 等角写像 / 普遍被覆写像 / 時間発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
単位円板上の等角写像の時間発展を微分方程式を用いて記述するレブナー理論について,単射性という仮定を落とし,さらに時間パラメータについては狭義増加で連続という,通常の指数関数による正規化を行わない上で,どこまで理論構築ができるかについて研究を行った.驚くべきことに,従来知られていた単射正則写像に関して成り立つ結果の大部分は,このように一般化された枠組みでも成り立つことが判明し,また単射性が必要になる結果も,何故単射性が必要になるかについても解明が進んだ. このような基礎的な研究が進む中で,本研究の対象である普遍被覆写像に関するレブナー理論は, この一般化された理論の枠組みの中でどのような位置を占めるかが次第に明らかになり, 同時にその重要性も分かってきつつある. レブナー理論においては,複素平面内の領域の全てがなす空間に,ある種の収束概念を導入することが重要であり,そのときに中心的な役割を果たすのがカラテオドリの核収束定理である.カラテオドリの収束定理は単射正則写像の列とその像領域列の関係をのべるものであるが, これを被覆写像の列に一般化することには既に成功している.この結果を踏まえて,普遍被覆写像の列の極限について研究を進めたところ,像領域の連結度は下半連続性を持つことが明らかになった.現在は, これに関連して像領域の補集合の成分が時間とともにどのように変化するかについて研究を進めている.予想として連結成分は時間とともに縮小することはあっても,完全に消滅することは起きないようである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要述べたように, レブナー理論の基礎理論について, 普遍被覆写像を含むもっと一般的な枠組みでの理論の構築についてかなりのことが判明している. また与えられた2つの正則函数について, どのような場合にレブナー鎖で結べるのかという,レブナー理論をより根源的な問題についても研究が進んできた. これは単射正則写像の場合では単に, 2つの像領域に包含関係があるときという単純な答えになるのだが, 一般の場合は2つ正則写像の作るリーマン面にまで考察を拡げるという方法で研究を進めている. このようにレブナー理論の基礎的な研究について進展が得られているので,おおむね順調に推移していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究で基礎理論の整備にある程度道筋がついたので,普遍被覆写像のレブナー鎖について,研究を進めたい. まずは像領域の補集合の成分が時間とともにどのように変化するについて研究を進める.予想として連結成分は時間とともに縮小することはあっても,完全に消滅することは起きないようであるから,これの証明を試みたい. 次に基本群並びにFuchs群(=被覆変換群)が時間的にどのように変化していくかを研究する.普遍被覆写像についてはレブナーの微分方程式で時間的な変化が記述されるわけであるが,基本群やFuchs群については,どのようになるだろうか. Fuchs 群やその一般化であるKlein 群については,様々な変形理論が知られているが, 奇妙なことに時間とともに増大していくという,代表者にとっては極めて自然と思えるものはまだ知られていないようである.そこで今後は,Fuchs群の時間発展を記述することについて研究を進める. このとき2つの観点が重要になる.一つは Fuchs群が時間とともに変化するときに, 対応する準同型の族で時間発展するものが得られるのだが,これの満たす性質を調べるという観点である.もう一つは個々の被覆変換がどのように時間発展するかという観点である.そして2つの観点を結ぶ関係式についても研究を進めたい.特に,連結度が変化する瞬間の時点において, 対応する被覆変換が分岐や縮退を起こすのではと考えられるが, 具体例を通じてどのような現象が置きているのを追跡したいと考えている.
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Causes of Carryover |
当該年度において海外出張を計画していたが, 所属する山口大学工学部の工学基礎教育の主任を拝命したために, 1週間以上の出張が不可能になり断念せざるを得なかった. しかしながら研究分担者である堀田講師とともに,次年度にレブナー理論に関する国際研究集会を2018年9月に東北大学の会場をお借りして開催する計画を進めている.この研究集会にはイタリア,ノルウェー,スペインなどから研究者を数名招待する予定で,現在交渉を進めている.既に,2,3名からは参加し講演をするとの返事を頂いているが, この為の招聘旅費がある程度必要になった. これに次年度使用額を充てる.
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