2021 Fiscal Year Research-status Report
1次元及び高次元複素力学系における implosion の理論とその応用
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16K05213
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
中根 静男 東京工芸大学, 工学部, 名誉教授 (50172359)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サドル不動点 / スーパーサドル / fiber Julia 集合 / 形式的共役 / implosion / characteristic direction / tangent to the identity / parabolic curve |
Outline of Annual Research Achievements |
1. Outgoing サドル不動点がスーパーサドルの場合、その不動点での形式的共役に関する標準形は知られているが、その形式的共役が正則になることは一般的には期待できない。筆者は skew product に対して、形式的共役が正則共役になるための必要条件と十分条件を与えた論文を完成して雑誌に投稿した。正則共役があれば、線形化可能な場合と同様に標準形を用いることにより implosion の存在を示すことができるので意義がある。
2. 原点でのヤコビ行列が単位行列になるような写像芽 (holomorphic germs tangent to the identity) の非退化な characteristic direction に対して、軌道がその方向から原点に近づく点の複素1次元の集合である parabolic curves が存在すること、特に「吸引的」な characteristic direction は複素2次元の吸引領域 (parabolic domain) を持つことなどが知られていて現在も活発に研究されている。 一般には parabolic curves は無限個存在することもあるが、筆者は「反発的」な direction と「吸引的」な direction を一つずつ持つような 2次の polynomial skew products tangent to the identity に対して、「反発的」な characteristic direction に付随する parabolic curve は一意的で、Julia 集合に含まれることを示した。このクラスの写像に関しては大域的な力学系の研究はほとんどなされていないので、端緒的な結果ではあるが意味があると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.2次元複素力学系においては、二つのサドル不動点で線形化可能な場合と incoming サドル不動点がスーパーサドルの場合の implosion の理論を構築し、fiber Julia 集合の挙動についての結果を得た。それらは2本の論文として雑誌に掲載された。また、outgoing サドル不動点がスーパーサドルの場合に、標準形への形式的共役が正則になるための必要条件と十分条件を与えた。この結果を論文としてまとめて雑誌に投稿した。さらに、polynomial skew products tangent to the identity の力学系に関して端緒的な結果を得たが、このタイプの写像においても parabolic implosion が生じることがわかった。
2.1次元複素力学系における parabolic implosion に関しては、parabolic locus の capture components に集積するような stretching rays の critical portraits を特徴づけた。さらに、Lavaurs 写像によって stretching 変形を充填 Julia 集合の内部に引き戻すことで得られる Lavaurs 変形によって変形されない写像は Fatou vector が整数であるという特徴づけを与えた。
3. 2020~2021年度は感染症流行の影響で国内外の研究者と交流する機会が十分にとれなかった。関連する研究者と討論して研究を完成させるために事業期間を再延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
最近、M. Astorg - L. Boc Thaler は「中立的」な characteristic direction を持つ order 2 の polynomial skew products tangent to the identity に対して、spiral parabolic domain を構成し、さらに parabolic implosion を発生させることにより新しいタイプの wandering Fatou components を構成した。そこで、2次の場合に得られた上述の結果を order が 2 の場合に拡張する。即ち、order が 2 で「反発的」および「吸引的」な characteristic directions を一つずつ持つという仮定の下で以下のように研究を進める。 1. 彼らの議論を参考にして、① 原点に収束する軌道は「反発的」な parabolic curve か「吸引的」な parabolic domain のどちらかに属すこと、②「反発的」な parabolic curve は一意的で、「吸引的」な parabolic domain の境界に含まれることを証明する。 2. 数値実験によると、この場合でも fiber Julia 集合は不連続に動くので parabolic implosion が存在すると予想される。そこで、彼らの議論を characteristic direction が「中立的」でない場合に拡張する。また、数値実験を行って wandering components の存在についても考察する。 3. Orleans 大学の M. Astorg と討論しながら研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症流行の影響で参加予定であった学会や研究集会が中止あるいはオンライン開催となったために、予定していた旅費としての支出ができなかった。次年度後半に予定されている研究集会に出席する予定である。
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