2018 Fiscal Year Research-status Report
非局所相互作用をもつ非線形移流拡散方程式系に対する爆発解の研究
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16K05219
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
黒木場 正城 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (60291837)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 退化移流拡散方程式 / 高速拡散型 / Shannonの不等式 / 断熱指数 / 有限時間爆発解 / エントロピー / 初期値問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
速い非線形拡散を与える退化移流拡散方程 式の初期値問題について研究を行なった.その特徴は拡散演算子が未知関数(密度関数)のべき乗に作用する偏微分方程式である.その指数aは圧縮性Navier-Stokes-Poisson方程式の特異摂動から与えられる断熱指数に相当し, 通常はaを1以上と仮定する. 他方, porous media 型あるいは p-Laplace型退化放物型方程式の初期値問題では, 密度関数が大きくなれば, 拡散係数が相対的に小さくなるいわゆる高速拡散型の問題となる. この問題に対してSugiyama-Yahagi(2011) による断熱指数が1-2/n <a<1の有限時間爆発解の研究がある.この結果を発展させて,空間次元nが3以上の同初期値問題に対する有限時間爆発解の研究を行なった.この問題は弱解の可解性が知られており,解析をするにあたり重み付きLp空間を導入した.本研究の特徴はこの高速拡散型に情報理論のShannonの不等式を適用した点である.密度関数の2次モーメントの時間発展を示す常微分方程式にShannonの不等式を適用することにより正値保存性との矛盾を導いた.そのShannonの不等式は断熱指数aに依存した式であり,従来の不等式を拡張した形をとる.a=1のとき, entropyはBoltzmann型となるため, Shannonの不等式はentropy 汎函数の負値部分を制御する不等式となる.退化型の場合, entropyが密度のa乗となるため負値部分は存在しないが, a<1の場合, 数学で扱われるentropyそのものが負になるため, 一般化されたShannonの不等式が必要となる.このとき空間次元3以上で断熱指数は n/(n+2) <a<1となり,爆発解の存在するときの断熱指数について新しい結果を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多成分移流拡散方程式系初期値問題に対する移流係数と粒子場係数による解の構造の分類の研究が前年度より進展が遅れている.拡散方程式系全体の自由エネルギーは,各成分の粒子系の自由エネルギーに,対応する移流係数と粒子場係数が乗じられた量の総和で表すことができる.それゆえ,それぞれの解が時間大域的に存するか否かを考察するとき,移流係数と粒子場係数の符号が重要な役割をもつ.この多成分移流拡散方程式系の初期値問題の解の分類を行うために単成分の初期値問題について解の定義,時間局所可解性,解の正値性,2次モーメント,高次元有限爆発解の条件を求めるためのShanonn の不等式を整理して,多成分系の形に書き換えた.対応する未知関数の和関数と差関数を導入すると,和関数と差関数に関する2つの移流拡散方程式とポアッソン方程式の初期値問題はKurokiba-Ogawa(空間2次元)(2003)の高次元版になる.この問題を解決するのに新たなアイデアを要する. また新たなる研究活動として移流拡散方程式の特異極限問題について取り組んでいる.移流拡散方程式の有限時間爆発解の研究は,特に粘菌のKeller-Segel方程式の爆発予想問題(1981)に関する数学解析の影響が大きい.実際にKeller-Segel方程式から得られた数理モデルであるNagaiモデルの有限時間爆発解の証明(1995)が現在のKeller-Segel方程式や移流拡散方程式の研究の礎となった.そこでKeller-Segel方程式の解とNagaiモデルの解の相関問題を特異極限問題として扱う.Keller-Segel方程式の化学物質方程式の時間微分項にパラメータをつけて0への極限を考える. これらの方程式に関連するスケール不変関数空間を導入し, 熱方程式の最大正則性の適用をアイデアとする.
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は,単成分の高速拡散型移流拡散方程式系の解の構造,爆発条件について研究を行ってきた.さらにまだ未解決であるが多成分系の移流拡散方程式系初期値問題の係数による解の分類を行ってきた.これらの解析法の改良を試み,空間高次元移流拡散方程式系の初期値問題の解の構造と有限時間爆発解の爆発問題及び特異極限問題について研究を行う.そのために共同研究である東北大学大学院理学研究科の小川卓克教授と研究打合せおよび情報交換を行う.また流拡散方程式系の専門家である国内外の研究者と情報交換を行い,関連する研究打ち合せを行う.さらに関係する国際研究集会,日本数学会,国内研究会,セミナーに出席し,成果発表,研究者との討論,情報交換を行う.また室蘭工業大学にて研究者15名程度の規模で研究集会を開催し,非線系偏微分方程式に関する最先端の情報収集を行う.
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Causes of Carryover |
多成分移流拡散方程式系初期値問題に対する移流係数と粒子場係数による解の構造の分類の研究が前年度より進展が遅れている.期待する研究成果を得られなかったことにより学会講演,国際研究集会での成果発表の機会が少なかった.研究の進展に努め学会発表,国際研究集会発表,研究打ち合わせなどの活動を活発に行いたい.
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Research Products
(3 results)