2017 Fiscal Year Research-status Report
ゲーム理論において現れる不連続な非線形項を持つ放物型方程式系の研究
Project/Area Number |
16K05226
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
出口 英生 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (30432115)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲーム理論 / 放物型方程式 / 不連続な非線形項 / 初期値問題 / 連続解 / 存在性 / 一意性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナッシュ均衡は、ゲームに参加している各プレイヤーが、他のプレイヤーの戦略を所与として、自分の利得が最大となる戦略をとっている状態である。ゲーム理論において、ナッシュ均衡の概念はゲームの解概念として重要な役割を果たしてきたが、複数のナッシュ均衡が存在する場合、プレイヤーはどのナッシュ均衡をプレイすべきか?という問題に直面する。これを均衡選択の問題という。この問題を扱うために、Hofbauer(1999)は、プレイヤーのランダムな移動を組み込む形で最適反応動学(一部のプレイヤーが現状に対する最適な戦略をとることで社会が動いていくという動学)を修正し、ナッシュ均衡のコンパクト開位相の意味での漸近安定性を用いて空間支配の概念を提案した。ナッシュ均衡が空間支配的であるとは、初期時刻に空間の大部分で他の均衡より優勢であれば、時間無限大でそれは全空間上で支配的となるということを意味する。空間支配的となるナッシュ均衡は高々1つであるので、存在が示せれば均衡選択の基準となり得る。
修正された最適反応動学は、不連続な非線形項を持つ放物型方程式系に対する初期値問題によって記述される。この初期値問題の解の存在性や一意性は今のところ、特定の2人ゲームの場合しか議論されていない。
そこで、本年度は、まず、より一般のゲームの場合に生じる不連続な非線形項を持つ放物型方程式系に対する初期値問題を扱い、その連続解の存在性を証明した。次に、連続解の一意性を議論し、一意性が成り立つための(非一意性が成り立つための)十分条件を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般のゲームの場合に生じる不連続な非線形項を持つ放物型方程式系に対する初期値問題の連続解の存在性、一意性に関する結果を得ることができた。 このことから、研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
プレイヤーのランダムな移動を組み込む形で修正された最適反応動学の下で、どのような戦略分布の集合がコンパクト開位相の意味で漸近安定となるかを調べる。その際、Hofbauer(1995)において構成された最適反応動学に対するリヤプノフ関数を手掛かりとする。
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