2017 Fiscal Year Research-status Report
流体方程式の解の正則性と一意性についての調和解析学的研究
Project/Area Number |
16K05228
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
谷内 靖 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (80332675)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 関数方程式 / 流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度に引き続き、平成29年度も水や油などの粘性のある縮まない流体(非圧縮性粘性流体)の運動を記述する非圧縮性Navier-Stokes方程式の解の正則性に関して、関数解析学的手法および調和解析的手法を用いて研究を行った。ここで、非圧縮性Navier-Stokes方程式とは、流体の速度場u(x,t)と圧力場p(x,t)を未知関数とする非線型偏微分方程式系である。同方程式に関して、初期条件がある意味で大きい場合、なめらかな解が時間大域的に存在するかどうかは未解決な問題である。この問題に対して、Beale-Kato-Majda型の爆発判定条件及びSerrin型の爆発判定条件が有名である。平成28年度はBeale-Kato-Majda型の爆発判定条件を考察したが、平成29年度はSerrin型の爆発判定条件を考察した。時間区間[0,T)までなめらかな解が存在し、各時刻における速度場uのsupremum normが区間[0,T)上で2乗可積分であれば、すなわち、uがL^2(0,T;L^{\infty})に属していれば、なめらかな解が時刻Tより先まで延長できることが知られている。これはSerrin型の爆発判定条件の特別な場合である。我々はこの条件を少し緩めることに成功した。具体的にはsupremum normよりも弱いノルムである重み付きMorreyノルムを用いた条件に変更することに成功した。この種の改良に関して、扱う領域が全空間の場合には、多くの研究があるが、我々は外部領域などの一般的な領域でも、この種の改良に成功した。さらに、エネルギークラスに属さない解を扱っている点でも、考える領域が全空間の場合においてさえも、これまでの知られている結果の改良になっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、Navier-Stokes方程式の解の正則性に関するSerrin型の正則条件の特別な場合である、弱L^nに値をとる関数として時間変数に関して連続な解の正則性に関してであったが、Serrin型の正則条件の別の特別な場合の条件を大幅に改良できた。具体的にはL^{\infty}に値をとる関数として時間変数に関して2乗可積分な解の正則性が知られているが、L^{\infty}ノルムの代わりに、もっと弱いノルムを用いた条件に改良することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
Navier-Stokes方程式の解の正則性に関して、Beale-Kato-Majda型やSerrin型の正則条件が知られている。今後もこれらの正則条件の改良を試みる。これらの条件の改良のために、Brezis-Gallouet-Wainger型の不等式が重要な役割を果たし、我々は同不等式のある種の改良に成功している。今後も同不等式の改良などを調和解析学を用いて行う。さらに、非常に一般的な領域上のNavier-Stokes方程式の解の正則性も考察する。また、熱対流の運動を記述する方程式に関しても同様の研究を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)フランスでの研究集会に参加し講演したが、その折の航空券代や宿泊費が当初計画より安くなったため。
(使用計画)今年度、国際研究集会を開催し、海外から多くの研究者を招き共同研究を行うが、当初計画より滞在日数を増やし、より充実した共同研究を行う。次年度使用額は、平成30年度請求額と合わせて、その旅費の増加分に充てる。
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