Outline of Annual Research Achievements |
1. 原点近傍で劣線形となる放物型偏微分方程式の初期境界値問題を研究している. 初期値問題に関する解の存在, 解の正則性, 時間大域的な解の有界性を証明し, オメガ極限集合が空集合でなく, 定常解の集合に含まれることを示した. 定常解の安定性に関して様々な結果を得ている. ノルムの小さな定常解は, 漸近安定でないこと, さらにもしその定常解が他の定常解から孤立していれば不安定であることを証明している. 正値定常解と負値定常解は, それぞれ一意であり, 指数漸近安定であることを証明している. その指数についても最良定数を与えている. 2. 楕円型偏微分方程式の一種である pラプラス方程式を球の内部で考察している. 境界にディリクレ境界条件を置いている. ネハリ多様体上でラグランジュ汎関数を最小にする解を最小エネルギー解と呼ぶ. 非線形項が球の表面近くで正であり, 内部で0になる場合を研究している. このとき最小エネルギー解は, 球対称でないことを証明した. その結果, 方程式は, 球対称解と非球対称解の両方を有する. 3. 一次元(p,q) ラプラス方程式において非線形項がr乗のベキとなる場合を考察している. 境界でディリクレ境界条件をおいて, 正値解の分岐を研究している. (p,q,r)の順序関係に応じて五種類の組み合わせが考えられる. それぞれの場合において, 正値解の分岐を研究している. 2つのタイプの(p,q,r)の順序関係においては, 分岐曲線が単調増加であり, 別の2つのタイプの順序関係においては, 分岐曲線が単調減少であり, 残りの1つのタイプにおいては, 曲線が単調でなく, 唯一つの点で折れ曲がっている. 分岐曲線の形を明確に捕らえている. また解のノルムが0に収束した場合と, 無限大に発散した場合において, 解の漸近形を求めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に5編の論文が出版された. 3回の国際研究集会, 2回の国内研究集会での講演発表を行った. 研究業績の概要でも述べたように, 劣線形放物型偏微分方程式の解の存在, 解の正則性, 大域的有界性, 定常解の安定性, 不安定性についての詳細な研究, (p,q)ラプラス方程式の正値解の分岐, 最小エネルギー解の非対称性の研究を行っている. そのために本研究は順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
1. 2019年度は, この科研費の研究の最終年度であるから, 現在までの結果を総合的にまとめ上げて, 7月にオランダで開かれる国際研究集会で研究結果を発表して, 他の研究者の評価を受ける. これにより自分の研究水準が世界的基準からどのような位置にあるかを知ることができる. またその際に, 外国の数学者と情報交換をして, 現在の世界の数学の方向を知るとともに, 自分の数学の材料と情報を集める.
2. 国内の研究集会に出席して, 自分の研究成果を発表する. またその際に, 共同研究者と研究打ち合わせを行い, 今後の研究の進め方について討論し, 情報交換をする.
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Causes of Carryover |
2018年度の国際研究集会では, 台湾大学の研究集会に参加した. 日本からの距離が短いため旅費の支出が予定よりも少なくなったために次年度使用額が生じた. また2019年度は, オランダのライデン市で7月に国際研究集会が行われ, これに参加するために, 次年度使用額を使う予定である. さらに2019年度は, この研究課題の最終年度であるために, 国内の研究集会にも多く出席し, 今までの研究成果を発表する予定である. これにも次年度使用額を使う予定である.
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