2017 Fiscal Year Research-status Report
情報科学におけるエントロピー及び不等式に関する基礎研究
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16K05257
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
古市 茂 日本大学, 文理学部, 教授 (50299327)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Tsallis相対作用素エントロピー / 対称ダイヴァージェンス尺度 / Young不等式 / 作用素不等式 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度においては,まず,前年度にGhaemiとGharakhanluと共著で出版した論文における主結果(Youngの不等式とその逆不等式)の別証明を初等的な手法のみにより完成させた.次に,前年度に国際会議で講演した内容を論文出版した.主な内容は,symmetric divergence measuresの上界および下界の導出である.次に,不等式の分野で著名なDragomir教授の予想に反例を示し,彼の予想は一般には成り立たないことを示した. 研究代表者は2004年ごろからTsallis relative operator entropyに関する基礎的な研究を続けているが,今回,accretive operatorsを用いた一般化についてRaiumlssouliとMoslehianとの共同研究として論文を出版した.具体的には,accretive operatorsに対して,調和平均と積分表示を用いて定義した拡張されたTsallis relative operator entropyに関する数学的な性質を研究した内容である.さらに,MoradiとMinculeteとの共著で論文を出版した.Hermite-Hadamardの不等式を用いて,Tsallis relative operator entropyの上界および下界の導出が主な結果で,論文中において,これまでの成果に比べて有用であることを示した. 研究代表者は,もう一つの専門分野として,2010年頃からYoungの不等式の改善や逆不等式の精密化に精力的に取り組んできた.2017年度には,数値的な不等式を発見することによって,より精密なYoungの逆不等式を作用素やノルムに対して証明することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は,2010年ごろから共同研究の機会があり交友のあったMitroi氏に協力を仰いで,divergenceに関する研究(Jeferry divergrnceやTsallis divergence)を進める予定であったが,彼女とは別の研究内容(主に,Jensenの作用素不等式の拡張)が非常に活発になってきていて,彼女の時間的な制約のために,1997年より交流のある国内研究者の柳教授および栗山教授と本件は共同で行い,論文発表に至った.一方で,Mitroi氏との共同研究は,現在進行中である.さらに,予定では,Dragomir氏からの問い合わせに関して彼自身に協力を仰いで成果を得る予定であったが,研究代表者のみで解決し,論文として出版することができた.これら以外に予定していなかった次の成果が上がっている.(i)relative operator entropyのaccretive operators を用いた一般化.(ii)Hermite-Hadamardの不等式を用いたTsallis relative operator entropyの上界および下界の導出.(iii)Youngの逆不等式の精密化および一般化について.(iv) 改善されたYoungの逆不等式の初等的な別証明.(v)Dragomirにより改良されたYoungの不等式のさらなる改善とパラメータ拡張に成功した.以上より,2017年度に関しては当初の研究計画以上に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,Mitroi氏との共同研究(Jensenの作用素不等式の拡張)を完成させて論文出版することが第一となる.また,彼女とはHypoentropyに関する数学的性質を調べ2014年に論文出版した経緯があるので,2018年度には,Maximum Hypoentropy principleについて研究していく予定である.ギブス分布やガウス分布のパラメータ拡張がどこまで可能なのかを論じる予定である.同時にHypoentropyやHypodivergenceの測度論的な取り扱いについても進めて行く予定である. また,上述したように2017年度に研究計画が大きく進展したことから,交付申請書(様式D-2-1)記載時に構想していなかった研究についても追加して行う予定である.現時点で思い描いている追加的に行いたい研究計画は以下の通りであるが,研究の進捗状況によっては多少の変化はあり得る. (i)Tsallis relative operator entropyに関するものとして,情報単調性の不等式に関する研究を行う予定である.また,relative operator entropyと作用素平均に関する不等式の研究を行う予定である. (ii)Jensenの作用素不等式やChoi-Davis-Jensen型の不等式に関する研究を行う予定である. (iii)作用素平均に関連した不等式の改善について研究を行う予定である.
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Causes of Carryover |
2016年度から10万円程度の残金が持ち越しとなっておりました.1月から3月の間に国内出張で京都大学数理解析研究所の研究集会に参加予定であったが,2017年度は学科主任という立場であり入試の時期に出張できる環境になかったために10万円弱の残金が持ち越しとなりました.持ち越された残金は,今年度中の出版印刷費(論文掲載料)に使用する計画です.
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