2020 Fiscal Year Research-status Report
情報科学におけるエントロピー及び不等式に関する基礎研究
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16K05257
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
古市 茂 日本大学, 文理学部, 教授 (50299327)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エントロピー / 相対エントロピー / 不等式 / 正作用素 / 作用素平均 / 凸関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はこの10年に渡って,本研究課題に関連する研究を遂行してきた.当初は情報科学におけるエントロピーの性質の研究を行ってきたがそこから作用素論(行列解析)的な基盤において相対作用素エントロピーの研究を行ってきた.本研究課題によって得られた研究実績について列挙する. (1)2つの凸汎関数に対してHeron平均とHeinz平均を含む作用素不等式を導出した.これは凸汎関数による結果で,作用素の場合を特別なものとして含むものである.(2)Jensenの不等式やエルミート・アダマール不等式や作用素平均に関する不等式へ応用として凸関数の不等式を改善する積分手法を新たに開発した.ここでは凸関数を用いた新しい手法で結果を導出し,その結果のグラフ的な意味づけも行った.(3)Jensen-Mercer型の不等式の一般化と改善を行った.スカラーに関する不等式を導出した.また,相加相乗平均不等式の面白い改善結果を得た.(4)作用素Bellman不等式の(和型および積型)逆不等式の導出に成功した.この目的のためにMond-Pecaricの手法を算術平均に対して適用した.(5)負のパラメータに対する新しいKantorovich型の不等式の導出に成功した.また,chaotic orderに対する同不等式を導出した.(6)Tsallis相対作用素エントロピーに対する情報不等式に関する結果を得た.また,Andoの逆不等式も導出した.FurutaやSeoによるこれまでの結果と数値計算にて比較を行った.(7)重み付き対数平均に対する作用素不等式の改善を行った.(8)2つの凸汎関数に対する対数平均について詳細に数学的性質を考察した.(9)2つのパラメータ拡張されたエントロピーについて数学的な性質を考察した.(10)最後に,和書ではあるが,情報理論に関する数学的専門書を出版した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
査読付き学術論文としては,9篇の論文を出版することができた.業績の成果を論文数で自己評価することに意味があるかどうかの議論はさておき,これまで平均して年間で4篇程度の論文出版であるのに対して,約倍の論文を出版できたことは,当初の計画を超えるものと考え得る.さらに,1篇の単著(和書)を出版することができた.これらの成果は想定を超えるものである.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は本研究課題の最終年度であったが,covid-19の影響で予定していた国際会議に出張できなかった.また,査読中であった複数(3篇)の論文が予想より査読に時間が掛かっていて,年度内に査読結果が出ずに研究費の使用が出来なかった.
次に,研究内容については,得られた結果国際ジャーナルに発表していく予定である.同時にこれまでと同様に共同研究者らと下記に示す研究課題を遂行していく予定である.(1)Symmetric homegeneous mean に関する研究をこれまで行ってきたが,本研究課題では対数平均を主に扱う.Symmetricとはならないがweight付きの対数平均に関しても取り扱い,その上界に算術平均,下界に調和平均があることを証明する.(2)凸汎関数と双対理論を用いた,より一般的な見地から平均とその不等式について研究していくことが主な目的である.(3)その他にも,凸性の度合いについて新しい尺度が導入できないかについて探っていくことも研究目的の1つである.(4)さらに,凸関数では有名なJensenの不等式と関連する対数和不等式の作用素版を研究したり,20年弱前に量子情報理論におけるOpen problemについて再度,作用素論や行列解析を駆使して解決できないか再挑戦することも目的の1つである.(5)さらに,ベルヌーイの不等式の改善も研究目的とする.(6)一方,エントロピー関係の方では,これまで行ってきたTsallis相対作用素エントロピーの新たな上界・下界についての導出を行う.スカラーの不等式では,情報理論でしばしば用いられるlog-sum不等式の一般化について研究していく予定である.
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Causes of Carryover |
covid-19により,発表予定の国際会議が中止となったため.同様に,covid-19の影響で多くのジャーナルの査読に時間が掛かり,年度内に査読結果が出ずに,論文印刷費用の支払いに至らなかった.本年度は,昨年度に投稿した査読の結果を得て,主にオープンアクセスジャーナルの論文掲載料に充てる予定である.
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[Book] 情報理論2021
Author(s)
古市 茂
Total Pages
304
Publisher
日本評論社
ISBN
978-4535789340