2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K05259
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
齋藤 正顕 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 助教 (90525164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 武博 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (80409614)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 被覆グラフ / 伊原ゼータ関数 / ラマヌジャングラフ / ゼータ関数 / リーマン予想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は次の結果を得た. 1. 1974年に K.S. Williams が示した有理数体のガロア拡大に関する Mertens の定理の拡張のグラフ理論的類似を,グラフのガロア被覆で,被覆群が非アーベル群の場合に示した結果が出版された. T. Hasegawa, S. Saito and I. Sato, A generalization of a graph theory Mertens’ theorem: Galois covering case, Forum Math., 30 (2018), Issue 3, 599-615. 2. A. Terras が 2011年の著書で予想した「正則とは限らないグラフについて, Ihara ゼータ関数の収束半径と,平均次数と,隣接行列のスペクトル半径に関する不等式」を証明した.収束半径はグラフの隣接行列と次数行列に関するレイリー商を係数とする2次方程式の根のどちらかになるが,負のルートと一致するという予想が問題として残った.この予想については,正則グラフを含む或るグラフについては示したが,一般の場合は未解決である.結果は論文として出版された. S. Saito, A proof of Terras’ conjecture on the radius of convergence of the Ihara zeta function, Discrete Math., 341 (2018), no.4, 990-996. 3. I .Dumitriu と S. Pal が 2012 年に示した次数 d が頂点数 n に比べてゆっくり発散する場合 (d=n^{o(1)} の場合) のランダム正則グラフ G(n,d) の固有値の極限分布が半円則になるという定理のグラフの跡公式を用いた別証明を与えた.結果は論文投稿に向けて準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画「非アーベル正則被覆グラフに関するグラフのメルテンス定理の拡張」について完了し論文も出版された.研究計画「グラフ理論的深リーマン予想の定式化」については,昨年度時点で被覆群がアーベル群の場合に定式化が完了し,論文を投稿準備中であった. しかし,メルテンス定理が非アーベル被覆グラフの場合にも拡張できたことで,それを取り込んだ形でより拡張された形に再度定式化するため,研究中である. 一方,A. Terras が「非正則ラマヌジャングラフとは何か?」という疑問の下で,数値実験により予想した Ihara zeta 関数の収束半径と, 隣接行列のスペクトル半径と平均次数に関する不等式を証明し,結果が論文として出版された.この結果についてはポルトガルの国際研究集会(WGSCO2018)で発表した.本研究に関する論文が二本出版されたので,進捗状況はおおむね順調といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は以下のような方針で進めていく.(1) 非アーベル被覆群を持つような被覆グラフについて,深リーマン予想を定式化し,可能であれば証明する.(2) Terras の不等式の応用を検討する.(3)論文 S. Saito, Discrete Math., 341 (2018), no.4, 990-996 で予想した Ihara zeta 関数の収束半径と, あるレイリー商に関する等式を証明する.難しいようであれば,この論文で示したよりも広いクラスの非正則グラフについて,この等式が成り立つか検討する. (4)Ihara zeta 関数がリーマン予想を満たすような非正則グラフについて,グラフの特性を調べる.(5)正則とは限らないグラフの増大列の tree number (の数論的性質)や固有ベクトルの成分の分布,スペクトル分布などを調べる.(6) 被覆グラフのMertens 定理を被覆群が無限群のときに拡張する.
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Causes of Carryover |
2018年3月に開催した研究集会「量子論にまつわる数学と数論の研究集会2018」の講演者のための旅費が事前の想定よりも少なくて済んだため余った.次年度の研究集会の講演者のための旅費,研究発表,または分担者との研究打ち合わせの旅費として使用する予定である.
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