2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05261
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Research Institution | Yokkaichi University |
Principal Investigator |
森本 光生 四日市大学, 関孝和数学研究所, 研究員 (80053677)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 束 四日市大学, 関孝和数学研究所, 研究員 (90204081)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 建部賢弘 / 関孝和 / 大成算経 / 括要算経 / 建部賢明 / 天元術 / 東アジアの伝統数学 / 綴術算経 |
Outline of Annual Research Achievements |
江戸中期の数学の集大成である関孝和・建部賢弘・建部賢明共著『大成算経』(全20巻+首巻, 1711)に注をつけて英訳することを目標として、『大成算経』の研究をしている。朱世傑『算学啓蒙』(1299)など中国数学の影響のもと我が国独自の数学、特に天元術を発展させた傍書法を用いた方程式論が、『大成算経』では体系的に述べられている。 2018年に、「巻之十二」(形率)「巻之十七」(全段解)「巻之十九」(演段例その一)の英訳を日本数学会のASPM79で公表した。2020年に、「巻之一」(雑技)の英訳を雑誌SCIAMVS (Vol19)で発表した。また、「巻之二」(雑技)の英訳はほぼ完成して投稿準備中である。以上で、全体のほぼ四分の一が完成したが、終了までにはまだ時間を要する。 現在研究中のものは、「巻之八、九」(日用術)および「巻之三」(変技)、「巻之十八」(病題儀)である。内容を数学的にきちんと理解して、『大成算経』の各巻や他の算書との関連を吟味してから、英訳に取り掛かる。江戸時代の日本数学の概念や用語は、現代数学のそれらとは異なるため、試行錯誤しながら英訳を行わなければいけない。英訳以前に、内容の数学的理解が不可欠である。 『大成算経』の巻之十七に書かれている行列式、終結式の理論(換式交乗といった)が巻之三で述べられている適尽方級法で用いられるなど、『大成算経』の巻相互の論理関係には注目すべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため東京を離れることができず、共同研究者との討議が十分にできなかった。 しかしながら、Zoomなどでネットを通じての研究交流の方式に習熟しつつあり、定期的にオンラインの討議を実行し、研究交流も成果がでるようになった。月に1回、京都数学史セミナーをオンラインで行い、月に2回、名古屋数学史セミナーをオンラインで行い、研究発表、研究討議の場としている。また、科研費で整えたコンピュータ環境を利用することにより、書斎での研究もゆっくりではあるが、順調に進展するようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
月に1回の京都数学史セミナー、月に2回の名古屋数学史セミナーの着実な実施を行い、あわせて、『大成算経』の本文を熟読しその数学の理解を深めたい。また、京都数学史セミナーでは中算書『四元玉鑑』、『算学啓蒙』などの輪講に参加して、『大成算経』のルーツの研究を行いたい。 関連して、『大成算経』の三人の著者の執筆分担状況については、建部賢明著の『建部氏伝記』の記事しか資料がないが、『大成算経』の本文を吟味し、関孝和らの他の算書を参照しつつ、究明したい。
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Causes of Carryover |
コンピュータ周辺機器を購入して、研究環境を充実させる。 コロナ禍が落ち着いて国内旅行が可能になれば、国内旅費にも使用する。
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Research Products
(1 results)