2018 Fiscal Year Annual Research Report
Mathematical Theory of Structured Population Models and its Applications to Demography and Epidemiology
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16K05266
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲葉 寿 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (80282531)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 基本再生産数 / SIRSモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
[1] 一般的な時間的変動環境における個体群増殖の閾値条件を与える基本再生産数理論は,感染症疫学や人口学における最も基本的な重要性を持つ理論である.近年,これまでは扱うことのできなかった同次非線形モデルのゼロ解の安定性に関する基本再生産数がThieme等によって提起されたが,そこでは錐スペクトル半径の概念がキーとなる.この点から従来の線形理論をふりかえってみると,Inaba (JMB, 2012)が提起した世代発展作用素のスペクトル半径が,一般変動環境における基本再生産数を与えることがわかる.一方,このような基本再生産数が,時間依存非線形系の解の安定性の指標になっているかどうかは,線形化安定性原理がないために明確ではなかった.そこで,時間依存システムの解発展作用素に対応する発展半群を考えて,もとのシステムのゼロ解ないし周期解は,時間変数を含む拡張された状態空間における自律系の定常解としてとらえられることを示し,発展半群を解作用素とする自律系に対する線形化安定性原理によって,個体群の絶滅と存続に関する基本再生産数の閾値性を明らかにした. [2] 感染からの回復が生涯免疫を誘導しないで,感受性を回復する感染症は広く存在するが,そのような感染症の数理モデルであるSIRSモデルは,ホストの年齢構造を考慮した場合は解析は容易ではなく,年齢構造化SIRモデルと異なってこれまで成果が無かった.本研究においては,SIRSモデルの定常解とその安定性を分岐計算によって示すとともに,コンパクトアトラクターの存在をしめすことで優臨界での感染個体群のパーシステンスを証明し,一般的な閾値原理が年齢構造化SIRSモデルに対して成り立つことを示した.
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Research Products
(7 results)