2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K05267
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
緒方 秀教 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50242037)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 佐藤超函数 / 複素関数論 / Hadamardの有限部分 / 第2種Fredholm型積分方程式 / Fourier変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は佐藤超函数論という複素関数論に基づく一般化関数論を用いた数値計算法の研究であり、前年度は主に数値積分の研究を行った。当年度はこれに引き続き、Hadamard有限部分積分の数値計算法、第2種Fredholm型積分方程式の数値解法、および、Fourier変換の数値計算法についての研究を行い、成果を発表した。 Hadamard有限部分積分とは、被積分関数が積分区間端点に特異性をもち本来なら発散する積分に対し有限値を対応させ意味付けを行ったものである。佐藤超函数論によればこの有限部分積分は複素積分で表示でき、通常の積分と同等と見なせる。そこで、前年度に研究した数値積分法を応用することにより数値計算を行う方法を考案した。理論誤差解析と数値実験により、本方法による積分近似値は高精度であり、真値に指数関数的に収束することがわかった。 第2種Fredholm型積分方程式の数値解法もまた、前年度に研究した数値積分法の応用である。ここでは、佐藤超函数の積分は複素積分で定義されることに着目し、積分方程式の積分作用素を複素積分で表した上で佐藤超函数論に基づく数値積分法を適用して離散化し、連立一次方程式に帰着させて数値解を得る。数値実験によりごく簡単な例に関しては高精度で近似解を得、真の解に指数関数的収束することがわかった。 Fourier変換の数値計算法について。Fourier変換の積分は振動関数を無限区間に渡って積分するもので、従来の数値積分法では計算が難しい。ところで、佐藤超函数法によればFourier変換はふたつの解析関数の実軸上の境界値の差で表される。本研究ではこれに着目し、従来の数値積分法(DE公式)でふたつの解析関数を計算し、これを実軸上へ解析接続することによりFourier変換を得る方法を考案した。数値実験により高精度で近似値を得ることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は佐藤超函数論に基づく数値計算法の研究を3年間に渡って行うものである。当初の研究計画は、初年度に数値積分、第2年度にFourier変換、第3年度に積分方程式の数値解法に関する研究を行うことになっていた。 第1年度(昨年度)は数値積分法に関する研究を遂行し、すでに論文を発表した。 続く第2年度(当年度)は、当初Fourier変換の研究を行う予定だったが、どのようにして計算法を構築できるか、研究遂行の見込みが立たなかった。それに対して、積分方程式の数値解法は計算法が得られる見込みができたので、計画を変更し積分方程式の研究を行った。そして、簡単な数値例については近似解が得られることがわかり、研究成果を学会発表した。ただし、積分方程式の数値解法については、その中に現れる連立一次方程式が極めて悪条件であり、その克服が課題として残っている。 ところが、当年度の終わり頃になり、期せずしてFourier変換の数値計算ができる見込みが立った。これは「研究実績の概要」に記したように、Fourier変換を佐藤超函数論の意味で与えるふたつの解析関数を数値的に求めるものであるが、これらの解析関数の解析接続が難関であった。それが、解析接続の方法を突如として思いついたので、この難関が突破できた。そこで急遽Fourier変換の研究を始め、概ねうまく行きそうだということがわかり、研究成果を学会発表した。 このようにして、少々の紆余曲折があったが、本研究は現時点で概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は佐藤超函数論に基づく数値計算法の構築を目的とし、とくに数値積分、Fourier変換、積分方程式に対して数値解法を構築することを目指していた。一番目の数値積分については充分な成果が得られ、学会発表・論文発行した。そして現在は、二番目のFourier変換、三番目の積分方程式の研究を遂行中である。 残った1年間でFourier変換、積分方程式の研究を行う予定であるが、これらについては下記のような問題点が残っており、その解決を今後の研究目標としたい。 Fourier変換について、「研究実績の概要」などに記したとおり「解析接続」が一番の問題であった。これが解決したのでFourier変換の数値計算法が構築できたが、いまの方法は数値計算の丸め誤差に弱く、多倍長計算に頼らなければならないのが大きな課題である。これに対して、安定な解析接続の方法を考え、せめて通常の倍精度演算で計算ができるようにしたい。 積分方程式についても、いま得られている数値解法は丸め誤差に弱いことが課題である。具体的には、積分方程式を離散化して得られる連立一次方程式が極めて悪条件なのである。現時点では多倍長演算を利用してしのいでいるが、より安定な数値計算法を考案する、あるいは、悪条件連立一次方程式に対する数値計算法を適用することにより、この難所を乗り越えたいと考えている。 なお、Fourier変換の数値計算に関連して、解析関数の解析接続の研究も行いたい。解析接続の数値計算法はどういうわけか従来の数値解析分野では研究が行われていないようであるが、本研究をもって解析接続の計算法の魁としたい。
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Research Products
(7 results)