2017 Fiscal Year Research-status Report
保存量をもつ反応拡散方程式とその摂動系-シンプレクティック構造と生物学への応用
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16K05273
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
桑村 雅隆 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30270333)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 反応拡散方程式 / 細胞の極性化現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
保存量をもつ反応拡散方程式に現れるパルス状局在解が、外部からの摂動を受けてどのように運動するのかを調べた。これは、外部シグナルの影響下で細胞の極性化現象を理解したいという生物学上の研究テーマに関連したものである。本年度は、生物学の知見にもとづいて、具体的な計算が実行できるような仮定をおき、無限次元の力学系理論を適用してパルス状局在解のダイナミクスを記述する常微分方程式を導出した。また、導出した常微分方程式によって予測されるパルス状局在解のダイナミクスが、理論生物学者による既知の結果(Otsuji et al, PLoS Comp. Biol. 3 (2007))と整合しているかどうかを、擬スペクトル法にもとづく精密な数値計算によって確かめた。理論生物学の範囲では、パルス状局在解が一定の速さで運動するという仮定のもとで様々な議論がされており、しかもパルス状局在解のダイナミクスは単純な差分法(保存則をみたす偏微分方程式に適用した場合、保存則が数値的に保証されているとは限らない)にもとづく数値計算によって調べられている。その結果は理論生物学者の直観に矛盾しないものであるが、パルス状局在解のダイナミクスを定性的に捕らえたものにしか過ぎなかった。一方、我々の数学解析はパルス状局在解のダイナミクスを定量的に精密に捕らえており、数値計算も保存則をみたすスキームにもとづいて実行している。この結果を2017年度応用数学合同研究集会(龍谷大学理工学部、2017年12月14日~12月16日)で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を進める上で、数学的にキーとなる事実に気がつくのに時間がかかってしまった。また、数値計算のスキームが保存則をみたすことを確認するのにも時間がかかってしまった。さらに、生物学における細胞の極性化現象の過去の研究結果を理解するのにも時間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の成果を論文の形にまとめて、応用数学もしくは数理生物学系の専門雑誌に投稿し、受理されることが当面の目的である。また、本研究で扱った保存量をもつ反応拡散方程式には移流の効果が含まれていない。しかし、細胞の極性化現象では、細胞質内における移流の効果が重要な役割を果たしているという研究報告もある。今後は、移流の効果を考慮した保存量をもつ反応拡散方程式に対して考察を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況が当初の予想よりも遅れてしまったため、研究成果を口頭発表する機会が少なくなってしまった。そのため旅費として使用すべき予算が余ってしまった。過去の科研費によって購入したパソコンが古くなってしまったので、この予算を新しいパソコンの購入に使用したいと考えている。
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Research Products
(1 results)